クリーチャー・ゲート
――俺の口の中から何かが飛び出す。それはゆっくりとした動きで長い舌を伸ばし、頬を舐めてきた――
俺は悲鳴を上げて飛び起き、ベッドから転がり落ちて床の上の空き缶を蹴り飛ばした。
不快な感触が残る頬をこすり、尻もちをついたまま狭い部屋を見渡す。
床にはビニール袋に詰めたゴミや脱ぎ捨てた衣類が散乱し、台所のシンクでは洗われるのを待っている食器たちであふれている。カーテンの隙間からは朝の陽ざしが差し込まれていた。
「……ははっ」
俺は乾いた笑い声をあげた。夢だったのだ。
ベッドに背中を預け、俺はため息と共に天井を見上げた。
頭上には、人の頭ほどの大きさの赤黒い肉塊が張り付いており、無数に生える長い舌をうごめかせていた。
俺が必死に呼吸のやり方を思い出そうとしていると、それは細かく震えだし、甲高い音を発した。
「オ、はよ、ウ」
――おはよう。俺には確かにそう聞こえた。
【続く】