みんなの好きな短編小説、教えて。
短編小説、好きですか?僕は好きです。
・すぐ読める。
・長編では見逃した、繊細な表現などが拾える。
・その作家が持つ、余計なノイズなども入り込む余地がない気がする。
でも自分で選ぶと同じ作家ばかりになる。
で、お願いです。メンバーシップの掲示板にこの旨のスレッドを立てます。そこで皆さんの好きな短編を紹介して頂きたいのです。
また、書き込みたいけど、メンバーであることをシークレットにしている方もいらっしゃると思います。そのような方はTwitterのDMでメッセージをください。素敵なあだ名をつけて投稿します(きんとうに乗りたくて20年さん、滝に打たれたが2秒でギブアップさんとか)。
僕もここで好きな短編を紹介します。
ヘミングウェイ「清潔で、とても明るいところ」
ヘミングウェイやスコットフィッツジェラルドは「ロストジェネレーション」と言われるそうです。またの名を「貧乏くじ世代」。
「貧乏くじ世代」なら僕も負けません。浪人やら留年で社会に出るのが何年か遅れました。
バブルとやらが終わっていました。すっかすかですよ、すっかすか。
それはそれでしょうがないのです。でも今でも僕の世代とその上の世代での「消費行動様式」の様なものが結構違う事を今でも思い知らされます。
消費する事を心置きなく楽しまれている。
僕なんか消費した瞬間に蒸発ですよ。
世代によって物事の捉え方がかなり違う。5年で変わる。
ヘミングウェイ、どのような印象をお持ちでしょうか。
海でカジキをとるじいさんの話でしょうか、それともアフリカでバンバンライオンを殺す人でしょうか。えらくアクティブな人の印象、持ちませんか?パパヘミングウェイなんて言われちゃって。
でも、好きな事ばかりして嫌なことがあると逃げちゃう。批判されると仕返しする。お金の援助をたんまりもらった人を無視する。「日はまた昇る」にがんがん身近な人を登場させて無茶苦茶恨まれる。で、パリから逃げる。恩人のスコット・フィッツジェラルドを実名で自分の小説に登場させる。内容はフィッツジェラルドとまるで関係ない。だからフィッツジェラルドは名前変えてくれよぅ、とお願いしたのに拒否。微妙な人です。
ボクサーのマイクタイソンが刑務所にいる間にヘミングウェイを読み、「ダメな奴だが、作品は良い」と言ったらしい。
(マイクタイソン、お前が言うか?)
髭のマッチョ。これだけでもう敬遠するでしょ。僕も敬遠してました。noteのみなさんなんてこの顔を目にした瞬間にスマホ投げて壊れて僕に請求するのが目に見えている。でも、繊細な表現で「しん」とした描写を切れ味良く書くんですよ。
「清潔で、とても明るいところ」
とても短いこの短編。暗い設定です。深夜のカフェにやって来る自殺未遂をした老人。その老人が長居するため苛立つ若いウェイター。彼は老人を冷たくあしらう。年上のウェイターはそれを咎める。やがて老人は店を去り、若いウェイターも帰路に就く。その後は年上のウェイターが自分自身と語り続ける。
これだけ読むとむちゃくちゃ暗い。しかしある種の静謐さが流れている。
是非とも夜に読んで欲しいです。みんなが寝静まった頃。天気は、何でもいい。音楽はいらない。
ヘミングウェイの文体は形容詞を出来るだけ省き、簡潔。一文が短いので読みやすいと思います。ただ長編は今の時代となれば冗長な部分もあると思います。短編の切れ味は最高です。
村上春樹 「ハナレイベイ」
村上春樹が好きだと言うと、なぜ、うんちくをたれる輩がやってくるのでしょうか。ビートルズも同じく。
高校3年の頃、バイト先で「羊をめぐる冒険」とか「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」をビートルズの「リボルバー」をガンガン聞きながら読むと最高ですよね、とか言ったばかりに村上春樹を語るお姉さんとビートルズを語るオッサン輩が両側からダブルコンボで責められて気持ち良くなりました。あの武蔵大学のお姉さん、元気だろうか。岡崎京子も教えてくれた。オッサンはどうでもいい。
「ハナレイベイ」。傑作だと思います。これだけで白飯5杯は行ける。
何かに従属している人、自分の意思は捨てて生きることを選んだ人、己の欲望に従いオリジナルだが短命に終わった人。そんな人達が織りなす物語。
密度と完成度。さすがです。冒頭の重い情景。所々入る軽妙なタッチ。でも完璧にまとまっている。
たぶんですが、思いつくままに書いている気がします。思いつくままに書いた短編ってドライブ感があると思う。中盤まで一気に僕を引き込みました。それから村上春樹の書く夏や南の地域、凄いと思います。様々な湿度をリアルに感じます(「ねじまき鳥クロニクル」、ノモンハンのカラカラ感も好き。嫌な圧をこれでもかと)
初期の「午後の最後の芝生」も素敵ですが、作者が年齢と経験を経て書いた「ハナレイベイ」の圧倒的な佇まい。村上春樹短編で僕は一番です。
※ヘミングウェイのところで夜に是非、と書きましたが、「ハナレイベイ」は雨がいいかな。
ギタリストの布袋寅泰さんがnhkのラジオでELOの「テレフォンライン」と言う曲を紹介するときに、「みんな!カーテン閉めて!でさ!少しボリューム絞ってスピーカーに耳を近づけて聴いてみて!」と言いました。なかなか素敵な思い出。
西加奈子 「太陽の上」「炎上する君」
僕は女性作家をあまり読んでいません。西加奈子と吉本ばななと向田邦子ぐらいでしょうか。高校2年。僕は男子高だったのですが、雑誌に出ていた原作吉本ばなな「キッチン」の映画の広告を教室で見ていました。友人が「これ、可愛いのか?好きなのか?お前?」と言いました。主演の川原亜矢子さん。僕は「この左足のつま先がピョンってしてるのがいいんだよ」と答えました。友人はまるで理解してくれませんでした。
こんな感じ。可愛いよね。
西加奈子でした。
二編とも短編集「炎上する君」に収められています。
「太陽の上」
太陽と言う中華料理屋の上に住んでいる君。3年間外出していない。
「炎上する君」
生きることへの不感症である様な浜中と梨田。その二人が足を炎上している男を追う。
沼地に捕らわれ生きている人々。身の回りの小さな変化大きな変化が何かを変える。
西加奈子のむちゃくちゃな創造力と想像力がフルスイング。ちなみに同じ短編集に収録されている「甘い果実」では山崎ナオコーラさんが実名でいじられまくっています。これも素敵な短編。
スコットフィッツジェラルド 「氷の宮殿」
ここでフィッツジェラルド出すと流れ的に「君、誰に影響受けてるのばればれだよ?」と言われそうだけど、グレートギャツビーはそんなに読んでない。
フィッツジェラルドの初期の短編。ぴちぴちしています。
南部から北部、気候も文化もまるで違う場所にお嫁に行った女の子のお話。
何と言っても情景描写が素敵すぎる。
「太陽の光は美術品の壺にかかる金色の釉薬の様にその家に滴り落ち、あちこちのまだらな日影は、ただ浴びるような日差しの強烈さをつのらせているだけであった」
南部の夏、その熱さが目の前に現れるかの様。
村上龍「空港にて」
村上龍でオススメの小説ありますか?と大学の後輩の女の子に聞かれたことがあります。迷うことなく「69」と答えました。え、なんか、やらしいですね、と言われました。
「69」。村上龍、高校時代の自伝的小説。1ページで3回笑いました。
noteで知り合った、素敵でイケメンで公共の光源氏と呼ばれるダイアログデザイナーの方は村上龍の「ライン」を大学の時に散々読んだとお話されていました。結構ヤヴァイ人かもしれません。
「半殺しにされたSM嬢、男の暴力から逃れられない看護婦、IQ170のウエイター、恋人を殺したキャリアウーマン。男女の性とプライドとトラウマが、次々に現代日本の光と闇に溶けていく」
ヤヴァイですね。
「空港にて」
離婚し、幼い子どもがいる風俗嬢のお話。
村上龍は常に「どこへもいかない人」「何もしない、依存する人」をたくさん書きます。大抵その人たちはあまりよくない方に向かいます。僕もそうだったのかもしれない。今はどうなのでしょうか。
同じ短編集に収録されている「公園にて」も好きです。
さて。ここに出していいのか。
出さなきゃいいのに。
自分が書いた短編で好きなものです。
(ああ、巨匠たちの下に出さなくていいのに)
(自己顕示欲が強すぎるんですよ、僕は)
(直すつもりなし)
「二塁を廻れ」
高校時代の同級生が久しぶりに再会する。二人は野球部だった。一人はプロに進み、一人は映像制作のサラリーマン。プロに進んだ彼は結果を残していない。その二人の居酒屋での会話から話は始まる。
「闇の中のトトロとパパ活」
女の子が深夜に幼馴染の男の子がバイトするドライブインに行く。ドライブインにはニールヤングやロッドスチュアートが流れている。他の客やバイトがいなくなった店の空気が二人の距離を縮めていく。
冒頭にも書きましたが、メンバーシップの掲示板にスレッドをたてます。
そこで皆さんの好きな短編を投稿して頂けると本当に嬉しいです。
そしてこれを機に、メンバーシップに入会も一つご検討をお願いします。
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