完璧なオークションを求めて
本年度のノーベル経済学賞が12日夜(日本時間の18時45分頃)に公表され、
・Paul R. Milgrom(Stanford)
・Robert B. Wilson(Stanford)
の2名が(ついに)選ばれました!経済理論やゲーム理論を長年けん引してきた大御所コンビの受賞ということで、同分野を研究する自分にとっても非常に嬉しいニュースでした。本当におめでとうございます🎉
授賞理由は
”improvements to auction theory and inventions of new auction formats”
「オークション理論の改良と新しいオークション形式の発明」
に対してです。
【関連情報】
オークション理論の関連記事や文献については、経済セミナー編集部による以下のまとめ(note記事)が参考になりますので、ぜひご覧下さい。ちなみに、本ページの一番下で、私も【関連書籍】をコメント付きで紹介しています。そちらも合わせて参考にして頂ければ幸いです。
・2020年ノーベル経済学賞はオークション理論!
私がslideshareで公開しているオークションに関するスライド資料もご紹介します。文字情報が中心で少し読みにくいかもしれませんが、オークションの理論と実践の大まかな流れが追えると思います。ご活用下さい。
・オークションの仕組み
過去に早稲田大学オープンカレッジ「ゲーム理論とマーケットデザイン入門」(全8回)の中で行った関連講義の音声も公開しています。
・Lec7|オークションの理論と実践(2013年6月19日)
オークションの理論と実践について、過去に新聞や経済誌に寄稿した論考の一部をいくつかnoteに転載しております。
・オークション理論とビジネスへの実践
・周波数オークション設計の課題 正直な入札行動導く制度に
・注目集まる「マーケット・デザイン」 欧米の制度設計で適用
ノーベル経済学賞については、昨年も同様の解説/翻訳記事をnoteに投稿させて頂きました。
・貧困を減らす実験アプローチ
また、経済学賞自体に関する記事も公開しています。ご関心のある方はぜひこちらも眺めて頂けるとありがたいです。
・ノーベル経済学賞って何だろう?
以下では、公式ウェブサイトに掲載された資料のうち、今年度の受賞者たちの業績を非専門家でも理解できるように分かりやすくまとめた、全7ページ(本文は6ページ)にわたる
・Popular science background: The quest for the perfect auction
の日本語訳を掲載します。(訳出には、自動翻訳サービス「DeepL翻訳」を使用し、明らかな誤訳や不自然な箇所は安田が修正しました)
「完璧なオークションを求めて」
毎日、オークションは、買い手と売り手の間で天文学的な価値を分配しています。今年の受賞者であるポール・ミルグロムとロバート・ウィルソンは、オークションの理論を改良するとともに新しいオークション形式を発明し、世界中の売り手、買い手、納税者たちに利益をもたらしました。
オークションには長い歴史があります。古代ローマでは、お金の貸し手が、借金の支払いができない借り手から没収した資産を売るためにオークションを利用していました。世界最古のオークションハウスであるStockholms Auktionsverkは、1674年に設立されました。
オークションと聞くと、伝統的な農地競売や高級美術品のオークションを思い浮かべるかもしれませんが、インターネットで何かを売ったり、不動産業者を介して不動産を購入するような今日的な取引もオークションだと考えられます。オークションの結果は、納税者であり、また市民でもある私たちにとっても非常に重要です。家庭のごみ収集を管理している会社が、公共調達で最低価格をつけることで業務を落札している場合も少なくありません。地域の電力オークションで毎日決定される電気料金は、家庭の暖房費に影響を与えます。私たちの携帯電話の繋がりやすさは、通信事業者が電波オークションで取得した電波の周波数帯域に依存しています。現在では、どの国も国債を発行する際に競売にかけて財源調達するようになりました。欧州連合(EU)の排出権取引の目的は、地球温暖化の緩和です。
このように、オークションはあらゆるレベルで私たち全員に影響を与えています。しかも、ますます普遍的に使われるようになり、複雑化しています。今年の受賞者が大きな貢献をしたのは、まさにこの分野なのです。彼らは、オークションがどのように機能するのか、なぜ入札者が特定の方法で行動するのかを明らかにしただけでなく、彼らの理論的な発見を応用して、商品やサービスを販売するための全く新しいオークションの形式を発明しました。これらの新しいオークション形式は、世界中に広く普及しています。
オークション理論
受賞者の貢献を理解するためには、オークション理論についてもう少し知っておく必要があります。オークション(または調達)の結果は3つの要因に左右されます。第一は、オークションのルール、つまり形式です。入札はオープン(公開)なのかクローズド(封印)なのか? 参加者はオークションに何回入札することができるのか? 落札者はどのような価格を支払うのか ー 自分の入札額か、2番目に高い入札か? 2つ目の要素は、オークションで取引されるアイテムに関連しています。入札者ごとに異なる価値を持っているのか、それとも同じ様にアイテムを評価しているのか? 3番目の要因は、不確実性に関するものです。異なる入札者は、アイテムの価値についてどのような情報を持っているのか?
オークション理論を使うことで、これらの3つの要因がどのように入札者の戦略的行動を左右し、オークションの結果を導くのかを説明できます。この理論はまた、できる限り多くの価値を生み出すためにオークションを設計する方法を示すこともできます。どちらも、複数の相互に関連したアイテムが同時に競売にかけられるとき、特に難しくなります。今年の経済学賞受賞者は、オーダーメイドの新しいオークション形式を作成することで、オークション理論をより実践的に適用できるようにしました。
<以降の内容については、Economics Design Inc.が提供する「Night Lights」から無料で閲覧することができます。該当記事へのリンクはこちらです。>
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