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【短文レビュー/邦画新作】『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』上田慎一郎監督・・・上田監督作品を観に行く観客はベタな家族愛の話なぞ求めていない
トップ画像:(C)2024アングリースクワッド製作委員会
監督:上田慎一郎/脚本:上田慎一郎、岩下悠子/原作:ハン・ジョンフン
配給:ナカチカピクチャーズ、JR西日本コミュニケーションズ/上映時間:102分/公開:2024年11月22日
出演:内野聖陽、岡田将生、川栄李奈、森川葵、後藤剛範、上川周作、鈴木聖奈、真矢ミキ、皆川猿時、神野三鈴、吹越満、小澤征悦
やりたいことと、得意なことと、観客から求められていることとが、あまりに乖離しているのが上田慎一郎監督の受難である。『カメラを止めるな!』も『スペシャルアクターズ』も『イソップの思うツボ』も『ポプラン』もそうだったが、本来この人は、とにかく家族愛を描きたいのだ。原作である韓国ドラマを観ていないので断言はできないが、話の流れを邪魔してまで主人公の妻と娘が絡んでくるのも、謎めいた存在にしなくてはいけない岡田将生にも家族の挿話をやたらと足して台無しにしているのも、いかにも上田監督らしい。ただそんな純粋無垢な家族愛なぞ、『カメ止め』のような計算高いプロット術を期待する観客からは認識すらされていない。精密に練られた細部へのこだわりも無ければ、想像の斜め上を行くトリッキーな種明かしも無い。上田監督と韓国クライムサスペンスの、それぞれの良さを打ち消し合ってしまっているようだ。
あと小澤征悦。最近は「堅物そうな大物役者にこんなコミカルな役をやらせちゃっている」という感じの映画出演が多いが、前段である「堅物そうな大物役者」というのは、世間の共通認識なのだろうか。少なくとも私は、小澤征悦を大物たらしめている根拠を把握していないが。