「ジョン・ドゥ ~deleted Parajumper~」
「shitt」
新兵ですら犯さないような初歩的ミスを犯し、俺はそう呟いた。
間取りすら不明の、古くて大きな農家に飛び込んだまでは良かったが、マヌケ揃いと思い込んでいたトラフィッカーの中にも、そこそこ頭の切れる奴がいたらしい。
拳銃一丁でそいつらと戦いながら、いつの間にか地下室まで追い込まれてしまっていた。
出入口は狭い石階段のみ。
その一番下で、荒い呼吸を整えながら気配を探る。
建物の規模からして、ここには20名程度のトラフィッカーがいたに違いない。囚われていた女性たちの数から見ても、それ以下ではないだろう。
ここまで14人をUTFに追い込んだから、残りは6人というところか。
逃がした彼女たちが助けを呼んで戻って来るなんてことは、まず考えられない。あの恰好なら、この辺りではたとえ相手が警官でも襲われてしまうに違いない。
彼女たちも、それは理解しているだろう。もしかしたら、客としてここを訪れていたような警官もいるかも知れない。目を瞑る見返りに、金とは別に昔から求められる特典だ。特にこうしたフッカーテルモなら、なおのこと。
残りが襲ってこないのは、時機を計っているのか、それとも援軍の到着を待っているのか。いずれにしても、時間は俺に不利にしか働かない。
米空軍のPJ(パラジャンパー)として少佐まで昇り詰め、単独で世界中のキナ臭い地域で救難活動に当たってきた俺が、ここまで追い込まれるとは。
もっとも、今回は軍隊時代にあったような緻密な計画も、豊富な戦闘資産もないのだから、こうなるのは半ば自明の理ではあったのだ。
もう一度、銃の弾倉を確かめる。残弾は5発と薬室に1発。
ライフルを手にした悪党6人と戦うには、些か心許ないが・・・。
俺は大きく息を吸い込み、身体に酸素を行き渡らせると、もはや足音も気にすることなく、石段を一気に駆け登った。
つづく。
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