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始まりは、あの雨の日(450字の小説)

始まりは雨だった。
傘も持たずに、濡れてる君の後姿に僕は惹かれた。

…あの時の僕と同じだ…
僕は遠い昔の事を思い出す。
あの日僕は、雨に濡れながら歩いていた。
荒む心を雨が洗い流すのか、僕の体に降り掛かる。

…君に何があったの?…
と、問いかけるすべは何も無く見つめているだけ。

あの日の僕も、雨のことなど気にもならなかった。
…この雨に打たれながら死んでしまいたい…
と、心の片隅に残して歩いていた。

…君もそう思っているの?死んでしまいたいと思っているの?…
君の事を思っていても呼びかける事もなく
僕は君の前に立ち、君の顔を見る。
君は僕を見て微笑むはずだ。

だが、君は無表情。
顔色一つ変えはしない。

後ろから声がする。

「どうですか!弊社開発の最新型のアンドロイドです。
この様に雨の降る時に、道路に立たせて置くと、皆さん興味を持つみたいで
顔を伺いに来るのですよ」
と、嬉しそうに語るのは宣伝マンだ。

人間そっくりなアンドロイド。
つぶらな瞳
哀愁を含んだ笑み。

僕は恋に落ちるのか?
人間では無くロボットに!

複雑な心になった、あの雨の日。




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