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【イベントレポート】プロ編集者から学ぶ、書く力の磨き方-佐藤友美さんトークイベントin武雄市図書館-

2024年8月10日、武雄市図書館でさとゆみさんこと、ライター・編集者の佐藤友美さんのトークイベントが開催されました。

書くことを仕事にしたい方、本づくりに興味がある方などを対象に1時間半、書く仕事のコツについてお話いただきました。

取材ライターとして5年、インタビュー記事の難しさや大変さを感じていたわたしに、とても響くお話でした。

取材ライターなら確実に参考になること間違いなしの内容です!


『本を出したい』刊行記念トークイベント


今回のイベントは『本を出したい』の出版社であるCCCメディアハウスとさとゆみさんのスクール生の横石さんが企画したトークイベント。佐賀県武雄市の武雄市図書館というめっちゃオシャレ空間で開催されました。

参加者は私と年代が近い女性がメインで、九州各地から来られていたようでした。

今年の3月30日に出版した『本を出したい』は、長年、数々の本に携わってきたさとゆみさんの叡智を詰め込んだ本で、本を出したい人や本づくりに関わるライターに向けて書かれています。

イベントでは、『書くこと』を仕事にしたい方や本づくりに興味がある方に向けて、具体的なライティングのコツや心がけについて1時間半のトークを行いました。

あこがれのライターに会いたい!

このイベントは佐賀のコピーライターの北村朱里さんから情報をもらい、参加しました。長崎県大村市のデザイナー兼かもめの人、久米真弓さんもご一緒です。そう、以前、私がnoteで紹介したお二方です。

私が参加した理由は、ミーハー心とキャリアプランのヒントが欲しかったから。

さとゆみさんの『書く仕事がしたい』は5回以上読みました。私は昨年3月に電子書籍を出版したのですが、そこでもたくさん引用させていただきました。

付箋だらけの『書く仕事がしたい』を見せているところ 久米撮影

毎日発信しているCORECOLOR(コレカラ)のエッセイも本当に素敵で。はい、つまり、ファンなんですね。

とにかく、一度お会いしたい、話したい、サイン欲しい、一緒に写真撮りたい、匂い嗅いでみたい、というミーハー心です。

そして、先輩ライターにこれからのキャリアプランのヒントをもらいたい、という思いがありました。というのも、最近体力の限界を感じているので、さとゆみさんはどういう風に働いているのか気になっていたんですね。あわよくば質問できたらいいなという気持ちで参加しました。

常夏のレディ登場

登場したさとゆみさんは、赤やオレンジの色が描かれた目の覚めるようなワンピースをお召しになっていました。

そして、小麦色の肌。もう、南国のレディでした。

きっと東京に戻ったら「ハワイにでも行ったの?」って聞かれることでしょう。「佐賀です!」と胸を張って言ってほしいですね。聞けば、数日前から佐賀入りして、プールで泳ぎまくっているのだとか。ランニングもされていました。めちゃくちゃ健康的ですね。

わたしはこの時点で「書く仕事もやっぱり体力勝負なんだ」と確信。朝の散歩と北斗の拳(フィットボクシング)を継続しようと硬く誓ったのでした。

日本語を日本語に翻訳する仕事

さとゆみさん Xより

いよいよトークイベントがスタート。

最初にさとゆみさんは「ライターは日本語を日本語に翻訳する仕事です」と簡潔に説明されました。この言葉の意味は『書く仕事がしたい』でも触れられています。

同じ「書く仕事」の中で、ライターの職業に一番近いのは、翻訳家だと私は思っています。とくにインタビュー原稿や書籍の原稿においては、求められている職能がとても似ていると感じる面が多々あります。
(中略)
相手の意図をくみ取って、最も適した日本語表現に置き換えるという点は、翻訳作業にとても似ていると感じます。

『書く仕事がしたい』p.48-49

そして翻訳して文章にすることによって、集客、求人、受注、信頼、さらに株価も上がるという結果を導き出せると。

「世の中には表に出ていないけど、書く仕事がたくさんあります。」
さとゆみさんも企業の中に入ってさまざまな文章を作成していると話していました。

たしかに、私も編プロから「えー、こんな仕事もあるんだー」と驚くようなお仕事をもらったことがあります。

文章を書く仕事って経済活動をする上で欠かせないんですよね。そしてみんなやりたがらない。「だからチャンスはいっぱいあるんですよ!」と希望ある言葉を投げてくださいました。

すべての文章はラブレター

文章のゴールは、誰かの態度や思考を変容させることです。つまり、その文章を読んだことによって、なんらかのアクションになる。気持ちの変化も含め、ビフォー・アフターがあることが大切です。

アクションにつなげる文章にするために、興味を持ってもらうよう表現し、相手の顔を浮かべ、書くことが重要とのこと。

伝えたい気持ちがなければ文章に熱は入らないし、読み手があいまいだと内容もぼんやりしてしまう。そういう意味では「ラブレターと一緒ですよ」と話されていました。

推し原稿ワーク

ここで、ワークが行われました。隣の人と「自分の推し」を推すタイム。2分ずつ自分の推しを話しました。

人に自分の推しの話をするのってちょっとむず痒い……。ニヤニヤしながら藤井風について熱く語りました。

推しについて話しているみんなの顔がめちゃくちゃキラキラしてましたよー」と観察されてちょっと恥ずかしくなりました。

ワークのあとに話されたのは、「すべての原稿は推し原稿に」ということ。取材先では相手の推せるポイントを必ず見つけるようにしているそうです。

そして、「これだけは伝えたい」というのが見つかるまで取材を終わらせない。自分で見つけられない場合は相手から言葉をもらったり、サービスの利用者から言葉をもらったり、いろいろしながら推しポイントを見つけ出すそうです。

たしかに、取材をしていると「あ、ここハイライトだな!」と思える魅力的な話をいただけることがあります。そして、そこを輝かせるように構成を練ったりします。

「ラブレター」で「推し原稿」、もうこれだけで、かなり勉強になりました。が!まだまださとゆみ講座は進みます!ここからが本丸です!

AI時代だからこそ、ライターの価値が爆上がり

今AIの技術が進み、AIが人に代わって文章を書ける時代になりました。そのため、ライターの仕事がなくなるのでは?という疑問や不安がある人もいるでしょう。

それに対し、さとゆみさんは「今、AIが進んでいるからこそ、プロのライターの価値が高まっている」と教えてくれました。

というのも、今、シリコンバレーでは、ライターの価値が爆上がりしているそうなのです。
ただし、AIには絶対かけない文章というのがあり、それが重宝されてきている、ということです。
では、AIには書けない文書とはどんな文章か。

次に、人間だからこそ書ける魅力ある文章のコツについて具体的に指南していただきました。これはめっちゃ大事なことばっかりなので、脳みそに叩き込んでくださいね!

RAWであること。そして、「犯人しか知らない言葉」を使う


AIが書けないのは、RAWで個人的な文。
RAWとは、日本語にすると””。
つまり、あなたが感じたこと、経験したこと、インターネットで検索しても出てこないような個人的なエピソードを書く。そういう生の声が、わたしたちライターが書ける文なのです。そしてそんな文が人を揺り動かす。

さとゆみさんのエピソードとしてトリートメント、フレグランスなどの話がありました。
成分や効能などスペックを語るのではなく、具体的なエピソードを記述したことでめちゃくちゃ売れたそうです(とくにマージンをもらっているわけではないそうです)。

個人的エピソードを書くことで、共感や比較が生まれ、読者と接点が生まれます。そしてこの個人的エピソードを語る上で大切なのが、”犯人しか知らない言葉”を使うことです。

犯人しか知らない言葉とは、吉本興業の島田紳助が「犯人しか知らない証拠」という言葉で話したところから拝借しているそうです。

たとえば、「昨日、一万円拾ったんだよね」から始まる漫才の場合、普通、一万円で拾ったことは、漫才のための作り話だと誰もが思います。
でもオール阪神・巨人さんの場合は「昨日、一万円拾った。雨が降っていたから、一万円札がアスファルトにぴたーっとくっついていて、破らないように、そっとはがした」といった言葉を付け加えるんだそうです。

この「アスファルトにぴたーっとくっついている」や「破らないように、そっとはがした」という言葉を、紳助さんは「犯人しか知らない証拠」として説明されていました。そういう、「実際に体験した人にしかわからない言葉」があることによって「ああ、本当に一万円札を拾ったのか」と思わせてしまうのだとか。

『書く仕事がしたい』p.176-177

では、実際に「犯人しか知らない言葉」をどうやって記事に盛り込むのか。
さとゆみさんはいくつかのTipsを紹介してくださいました。

  • 数字を使う

  • 五感を使う

  • オンリーを使う

  • AなのにB 逆説文を使う

  • エピソードファーストで書く

  • 徹子で触って、タモリで脱がせる

とくに印象に残ったのが、エピソードファースト

気持ちを書く(聞く)のではなく、そのときどんなことが起こったのかを書く。
結局「感動した」とか「おもしろかった」と言ってしまうとそれ以上の引き出しがないんですよね。

そこで、その出来事について「それはいつ?」「どこ?」「季節は?」「時間は?」など深掘りをしていきます。時間や場所、取材者の振る舞いなどを再現することで映像を見ているような、追体験しているような感覚を読者に与えます。

徹子でさわってタモリで脱がせる

徹子で触って、タモリで脱がせる、も気になりますか?
これはぜひ、『書く仕事をしたい』をご参照くださいね。

島田紳助とか阪神巨人とかタモリとか、昭和な登場人物で「知ってます?」と確認する感じも面白かったです。

書く、聞くで世界を好きになる

最後のお話で心に響いたのが「自分の世界が好きなものであふれる」という言葉。

取材をすればするほど、世界の解像度があがり、人や地域、サービスに愛着が生まれ、好きになる。さとゆみさんはインタビューの相手が苦手であっても、取材後は「すきになっちゃう❤」と言われていました。

人のことをよく見て、聞く。取材者の気持ちで生きてみる。すると嫌いな人も好きになる」そうやって「この仕事をして良かった」と思えたことがたくさんあるそうです。
私も、この仕事をしていて本当に人生が豊かになりました。この人生を自分で選んで良かった!

最後はめちゃくちゃエモい話をしてくれ私も半泣き。心がめちゃくちゃムーブしたあっという間の90分でした。

おわりに

著者に本を持たせるわたし

今回、ミーハー気分でトークイベントに参加しましたが、とにかく得られたものがたくさんありすぎて、本当に参加できてよかったです。

ちょうど来週に難しい取材が予定されていて、「どうやって取材者に話を聞こうか」と頭を悩ませていたところでした。エピソードを語るというのが大きなヒントになったので、これからの取材に向けて準備が進められそうです。

「質問は?」というファシリテーターの声かけに間髪入れず手を挙げたあかりさん。イベント中の聞く姿勢も素敵で、コミュニケーションのプロは違うなと驚きました。そしてその後久米さんも質問。物おじせず素朴な疑問を投げかける久米さんも素敵でした。

さとゆみさんと、コピーライターのあかりさん

イベントのあとは、あかりさんと久米さんとお茶をしました。ありがたくもキャリアプランで悩む私の相談に乗ってくれました。ここでもめちゃくちゃためになる話が展開して、アウトプットしたいけれど…また3000字とかになりそうなので今回は以上とします。

本当に素敵なイベントでした。さとゆみさん、企画をしてくださったCCCメディアハウスさん、横石愛さん、武雄市図書館さん、ありがとうございました。


イベント記事書きます!
私は取材ライターとして体験記事、イベントレポート記事、インタビュー記事などを執筆しています。

書いてほしいイベント記事などありましたらぜひお声かけ下さい。

お待ちしています。

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