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映画「PERFECT DAYS」、外国人巨匠監督が下町目線で描いたTOKYO
映画「PERFECT DAYS」(独ヴィム・ヴェンダース監督)。渋谷区のトイレ清掃員である主人公・平山(役所広司)。その毎日の日常を淡々と描く寡黙な作品。世の中との関わりを自ら絶っている平山。しかし社会の側から、平山に接近して、あれこれお節介を焼く。金や車を貸してくれと懇願する部下、泊めてくれとやって来た家出娘(姪)、持ち出したカセットテープを返しに来る同僚の彼女、末期癌を告白する居酒屋女将の元夫。いい男には、自然に女性も惹かれる。それは平山がそれなりの過去を持っているからだ。セレブな妹の出現が、鎌倉育ちの平山の生い立ちを垣間見せる。彼には培った知性や人生の含蓄がある。しかしこの映画は余計なことを言わないのがいい。
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映画メインビジュアル
落魄したかに見える生活だが、毎日を黙々と生きる姿は、世界との出会いを美しく演出している。凡庸な毎日の中で、その人生が丹精込めたものであることが伝わってくる。トイレに隠された便りで見ず知らずの相手と文通、浅草「福ちゃん」での晩酌、「電気湯」の銭湯♨️、公園でのサンドイッチ🥪ランチ、木漏れ日のカメラ撮影、古本屋通い、コインランドリーでの洗濯、仕事で回る車で聴くカセットテープのシブい音楽。どれも磨き抜かれた宝石のような人生の一コマだ。そして連れ合いによれば、外国人監督でありながら、東京を下町視線で描き切っているのがいい。平山が住む下宿地帯のシンボル・東京スカイツリー。そのいいところは、下町に建っているところ。東京タワー🗼が建っている芝公園はセレブな場所。東京スカイツリーの押上は、ド下町だ。そこで平山は底辺で生きている。
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エンディングシーンは、まさに主人公の鮮やかな一人芝居。刻々と変わりゆく表情が見事。配されたキャストも、豪華絢爛でありながら、何気なく素敵(以下、ちょっと間違えているかもしれない)。田中泯(浮浪ダンサー)、中野有紗(姪)、柄本時生(同僚)、アオイヤマダ(同僚の彼女)、麻生祐未(妹)、石川さゆり(居酒屋の女将)、三浦友和(女将の元夫)、安藤玉恵(同僚)、あがた森魚(居酒屋客)、犬山イヌコ(古本屋)、甲本雅裕(福ちゃん大将)などなど。そして写真は森山大道だ。まさにアクション映画との対極にある作品。2時間があっという間だった。
https://www.perfectdays-movie.jp