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おあとがよろしいようで

柳家さん蕎の落語を聴きに臨済宗「龍源寺」に行った。お寺で落語って面白い企画。柳家さん蕎師匠は、柳家小さんの内弟子で、江戸古典落語の最高峰と言われる。テレビ出演などの芸能活動は一切せず、古典落語一筋。前座に十番弟子・二つ目の柳家小んぶが「あくび指南」で繋ぎ、この日は三つ目の高座という、さん蕎師匠の出番。前半が「初天神」「時そば」に、中入りを挟んで、人情噺の「井戸の茶碗」。卓越なる語り口に、身振り手振りも絶妙。たっぷり笑わせながら、人情噺では聴き手をホロリとさせ、きっちりとオチもつけてくれる。以下、ネタバレなので、結末を知りたくない方は読まないで。
http://rakugo-kyokai.jp/variety-entertainer/member_detail.php?uid=44
 「あくび指南」は美しい女性の勧誘で「おあくび見習い」の講習を受けに行った熊五郎だが、出て来た講師は女性の亭主。上品な欠伸を習うものの、ちっとも上達しない。それを見て退屈していた、付き添いの八五郎が欠伸上手になって、先生に褒められる。「初天神」は、買い物ねだりをしない約束で、息子にせがまれて天満宮の縁日に連れて行った父親。しかし結局、飴を買わされて、団子を買わされて、凧を買わされる。しかし、親父に背中を叩かれて飴を落とし、団子の蜜は全部父親に舐められ、凧は親父が夢中になって息子に渡さない。結果、息子が親父に言ったのは「親父を連れてこなきゃよかった」。まあ「時そば」は説明するまでもないだろうが、「今、何時だい?」。「井戸の茶碗」は、生活に困窮した浪人・千代田朴斎から仏像を百文で買った屑屋の清兵衛。それを細川家の勤番・高木に二百文で買ってもらう。喜び勇んで、浪人者に儲けの半分を届けに行った。しかし浪人は、一度売った以上は貰えないと固辞。更に高木が、その仏像を磨いていると、中から五十両が出てくる。屑屋は高木から浪人に届けて欲しいと改めて頼まれる。しかし浪人は、またもや固辞。その一部を受け取ることになって、体裁上の代償に差し出した茶碗。これが細川家のお殿様の眼に止まり、高麗の貴重な青磁であることが鑑定され、三百両が下される。これを高木から浪人に届けて欲しいと言われた屑屋に、浪人はまたもや固辞。かわりに高木の嫁にと娘を差し出す。高木は「千代田朴斎殿の娘なら」と娶ることにする。しかし「娘さんは磨けば光る」と清兵衛に言われて、高木は「いややめておこう、磨くと小判が出る」。おあとがよろしいようで。

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