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深谷忠記「偽証」

深谷忠記「偽証」(徳間文庫)。電子書籍版はこちら↓
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 一人息子を育てながら、九年かけて弁護士になったおっとり刀の村地佐和子。そんな彼女に殺人事件の弁護依頼が舞い込む。被告の大学生・石崎文彦は恋心を抱くタイ人ホステス・リャンを助けようとした。その結果、売春を強要していた元締めのタイ人女性・メイが殺害された。法廷で文彦は一度は自らの犯行を証言しておきながら、後に供述を覆す。そして文彦と共に現場にいたリャンは、佐和子への供述とは異なった証言をする。判事も検察も弁護士も、二転三転翻弄される波乱の裁判。
 本格的な法廷ミステリーである。タイトルはまさに本作品の核心となるテーマ。人はありとあらゆる理由で嘘をつく、唯一の動物である。自らを守るため、大切な人を庇うため、誰かを陥れるため、過去を償うため。何かを間違えてしまったために、いつかはその綻びが生じる。善意は隠れていても、悪事は必ず千里を走る。とはいえ、エンディングは『自分だったらどうしただろうか?』と深く考えさせられる。そして第二のポイントは法制度の変化。一つは貧しい国に蔓延る「人身売買」。本作品が発表された頃は、被害者を守る法律すらなかった。しかし本作品が実業之日本社から刊行された2008年から今日に至るまでに、ようやくにして今年に入管法が改正された。更に法廷の光景が変わった点として、2009年から裁判員制度が始まった。新しい制度では、予告のない証人尋問・証拠提示、主張の変更ができなくなった。その意味で本作品にあったドンデン返しは、当時だからこそのシーンである。


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