どうせなら「半沢直樹」四部作を読破
Facebookの動画コーナーでは、志村けんやサンドイッチマンのコント、ダニの駆除、V 6『学校へ行こう!』などをやっている。在宅勤務で朝ゆっくり寝ていられるので、ついつい面白くて観てしまう。観ている側の嗜好を分析できるのか、同じ系統のコンテンツが次から次へと現れる。そしてこのところやたらと引っかかってしまったのが『半沢直樹』。ほとんどテレビは観ない人だったので、実際の放送時には最終回を観ただけだった。しかし堺雅人に加えて、香川照之、市川猿之助、片岡愛之助など曲者揃いの歌舞伎役者たちの演技は抜群で、観れば観るほど引き込まれてしまった。しかしどのみち動画サイトへの無料勧誘なので、ちょい見せで尻切れトンボ。とはいえ毎晩観ていると、大まかなあらすじはわかってきた。全体像を掴むために、いまさらながら『どうせなら本(原作)を読もう』と電子書籍版を購入。それもなんと4冊合本版(文春)があるではないか↓
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池井戸潤「半沢直樹」は4部構成である。そもそも映像で、大まかな流れは知っていたのでスラスラ読める。作品中の半沢直樹は小説でも映像でも言いたい放題だ。『こんな社員がいたら大変だろうな』とは思う(但しテレビでやたらと登場する土下座場面は小説にはほとんどない)。ここまで歯に衣着せずにズバズバ言って失脚しないのは、小説だからあり得る話。しかし言いたいことを言えずに溜め込む(自分も含めて)世の人々にとっては、半沢直樹はまさに『スカッと爽やか』となる代弁者であろう。そしてここまで不正事件が頻発するのも、これもフィクションだからだろう。いずれも忖度から生まれた社会や組織の歪み。人間とは罪に塗れた哀れな存在である。そこを大岡裁きで一刀両断する光景は、保守的で変わろうとしない澱んだ日本に対して著者が突きつけた刃である。
1️⃣俺たちバブル入行組
・バブル期に入社した同期たちと明日を夢見て、産業中央銀行に入社した半沢直樹。 10年後大阪西支店に融資課長として赴任した途端に、浅野支店長が強引に進めた「西大阪スチール」への融資で5億円の不渡り。責任を半沢になすりつけようとする浅野。姿をくらました社長の東田。しかし半沢は「西大阪スチール」が計画倒産であったことを突き止める。東田と隠し資産を探すうちに、実は大阪西支店が関わっていた疑惑が生じる。
2️⃣俺たち花のバブル組
・「西大阪スチール」の不良債権を見事に回収し、本社の花形部門に栄転した半沢。戻った途端にいきなり巨額の運用損失を隠蔽していた伊勢志摩ホテルの再建と、その金融庁(担当は黒崎調査官)調査の担当を命じられる。一方で同期の近藤は出向先のタミヤ電機で融資のための粉飾決算を見つける。背後に見えてきた大和田常務の影は、産業中央銀行と東京第一銀行が合併した東京中央銀行の暗部であった。いよいよ大和田vs.半沢、黒崎vs.半沢の激突のドラマが火蓋を切る。
3️⃣ロスジェネの逆襲
・「伊勢志摩ホテル」案件で旧東京第一銀行出身者から反感を買った半沢は、功績を挙げたにも関わらず子会社の東京セントラル証券に出向になった。着任して直ぐに電脳雑技集団による東京スパイラル買収のアドバイザー契約を、親会社に横取りされた。この経緯に不審を覚えた半沢は、部下の森山と共に調査に乗り出す。そこにはいくつもの詐欺まがいの猿芝居と不良債権の罠が仕込まれていた。親会社vs.子会社の壮絶な戦いが始まる。
4️⃣銀翼のイカロス
・営業第二部に復帰した半沢直樹を待っていたのは、頭取ご指名による難題「帝国航空」の再建だった。七つもの労組を持つ名門航空会社は、旅客減少とLCCとの競争激化の中での、組織の硬直化と高コストに喘いでいた。銀行頼りの無責任な経営から、自力再建への道筋をつけた東京中央銀行だったが、そこに政権からの横槍が入る。新たに政権を奪取した進政党の箕部幹事長と、女性キャスターから白井国交大臣の作ったタスクフォースチームが乗り込んでくる。彼らの要求は国民にアピールする、全取引銀行の債権放棄であった。ついに半沢直樹vs.政治のハルマゲドンが始まる。
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