法テラス
東京都立大学同窓会の定例勉強会「八雲サロン」に日本司法支援センターの富田さとこ氏が講演。この団体は「法テラス」とも呼ばれている。冨田氏は佐渡島に渡って、その後に沖縄勤務を経て、アメリカに留学、さらにカトマンズに勤務。2018年3月に法テラスに復職して本部国際室長を務める。
https://www.houterasu.or.jp/index.html
1990年代に司法制度改革が始まったとき、司法と市民の間には4つの壁があると言われていた。心理の壁、費用の壁、距離の壁、情報の壁。この障害を解決する国家的な切り札が「法テラス」。資力の乏しい者に対し裁判費用の立て替えと担当弁護士の斡旋を行ってきたが、2006年4月に日本司法支援センター(愛称「法テラス」)が設立され、法テラスが民事法律扶助事業を請け負うことになった。法テラスは①民事法律扶助、②国選弁護、③司法過疎対策、④犯罪被害者支援、⑤情報提供の5つの基幹業務で成り立っている。佐渡島ではいくら長時間働いても捌き切れない相談案件の山を、沖縄では少年刑務所における社会的孤独を、米国では人種差別を、ネパールでは外国労働者の不利を実感してきた。しかし現代日本においても、コロナ禍の退職勧奨などが外国人労働者の困窮を発生させている。このような経験から、弁護士は社会の世相を如実に観ることができる仕事であることを実感している。
傍聴していて「すごい人がいるものだ」と圧倒された。大学在学中に司法試験に合格して、卒業翌年に弁護士登録。すぐさま佐渡島と沖縄で現場経験を積む。そこでサッサと日本に見切りをつけて、アメリカからネパールに渡る。そこでも「刑事政策修士」の資格や「ネパール最高裁チーフアドバイザー」のキャリアを積んで、日本に凱旋。世界を股にかけて、しかも修羅場を潜り抜けて来ている。人生の進路への決断、現地への溶け込み、常に上を目指す向上心。この紆余曲折を口では「大変だった」と言いつつ、実に楽しそうに振り返る。「人生は一度しかないから、やりたいことをやる」。しかも「ドクターX」ばりに「私、失敗しないので」と自信に溢れている。そんな生き方を通して、国際社会における、主に労働市場の問題点を抉り取っている。この先に講師は、日本でもそして世界でも、緒方貞子級に羽ばたいて欲しいものである。