白鵬こと間垣親方の初解説
白鵬こと間垣親方がNHK相撲中継に解説で初出演。そもそも力士は観客席からの大相撲観戦が許されていないので、中継席にいた本人からすれば自分が土俵に立っていないことが信じられない心境だったかもしれない。引退直後なので、力士としての白鵬の思い出の一番や入門当時の映像などが紹介されていた。
解説は素晴らしく深い洞察。そして誰よりもよく勉強している。石浦など小兵の力士に対しては、栃ノ海などの立ち合いの強さを学んで欲しいとのコメント。白鵬が大鵬と双葉山を尊敬して研究していたことは知っていたが、小兵横綱・栃ノ海の名前が例として出てきたことにはビックリした。また取り口の分析も非常に的確だった。例えば照強が琴恵光に叩き込みであっさり敗れた一番では「照強が潜り込もうと沈んだところを、琴恵光が叩き込んだタイミングがピッタリ合った」と評していたが、ビデオのスローモーションを見ると、たしかに照強の身体が一瞬沈んでいる。隠岐の海と御嶽海の一戦では「隠岐の海はいつも左差しに誘い込んでくるが、それに乗ってはいけない」と話していたが、ビデオ再生で見れば、これまた間垣親方の言う通りだった。
白鵬杯についても三瓶アナから質問があったが、初回開催での団体優勝チームの一員(青森県)が阿武咲で、2020年の春場所で阿武咲が白鵬を破って金星を挙げた時に『とうとうこういう日がやってきた』と感慨深げに語っていたのは感動的だった。そして阿武咲たちに優勝メダルを運んでいたのが宇良少年だったというのもいい話であった。今後の白鵬杯などの相撲人材発掘において「魁皇関のような型を持った力士を育てたい」と言った卓見にも痺れた。これまた例えがいい。魁皇は怪力無双にして、横綱にこそなれなかったが優勝5回の最強大関であった。
全体の語り口は、鶴竜親方と共通する「囁きタイプ」。やっぱり日本語へのハンデが少しあるのだろうか。稀勢の里こと荒磯親方のような立て板に水を流す饒舌でもなく、安美錦こと安治川親方のようなユーモラスさでもなく、はにかむような喋り方がとても愛らしかった。