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倉阪鬼一郎「奮闘、諸国廻り 悪代官を斃せ」

倉阪鬼一郎「奮闘、諸国廻り 悪代官を斃せ」(徳間文庫)。電子書籍版はこちら↓
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飛川角之進、諸国悪党取締出役、通称諸国廻り。旗本・飛川主膳の三男坊として育ったが、実は将軍家斉の御落胤。剣の腕は立つ。湯屋の娘おみつを娶り、息子に王之進。補佐役として武芸の達人・春日野左近、忍びの者・草吉を連れた新しいお役目は、天領である飛騨高山で郡代に不穏な噂があるとのこと。国松四郎史枝は、数多の謀略で郡代となり、領民に高い年貢を課していた。飛騨高山では、多くの女子供が拐われて帰って来なかった。一方で郡代が出した店で、妖気漂う陶器や布小物が売られたいた。誘拐された者たちは山中の黒卍寺に連れて行かれた。そこには黒卍教の教祖である高潔上人が君臨していた。飛川角之進は人質奪還に被害者の家族を交えた討伐隊を率いる。黒卍寺に待っていたのは、おぞましい事実と、抜け目ない陥穽であった。
 江戸時代は幕府が権力を持っていたとはいえ、日本各地は地方分権。ましてや直轄領には大名もおらず、まさに郡代の治外法権であった。目鼻の効く郡代であれば、天領の富を掠め、中央に見えない殖産興業で懐を肥やす。こういう腐った世には、一刀両断の救世主が必要である。将軍ご落胤で血筋正しい飛川角之進は、まさに打ってつけの役回り。しかし成敗に至るまでに、素直に言うことを聞く輩ではなく、生死の境を彷徨いながらの世直しである。諸国廻りの後先には、道ゆく諸国の旨い物に舌鼓を打つ。妻子にお土産を欠かさない。飛川角之進の諸国廻りは、仕事もアフターファイブも人間らしいのである。

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