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「大相撲の継承発展を考える有識者会議」提言書骨子

「相撲」5月場所総決算号が届く。表紙と特集は連覇を果たした照ノ富士。遠藤と若隆景の技能賞、宇良の十両優勝、琴勇輝と舛ノ山引退、無観客開催、応急対応処置講習会などのカラー特集記事が並ぶ。
 そんな中で、最も読み応えのあった記事は「大相撲の継承発展を考える有識者会議」提言書骨子。今回はここを重点的に取り上げてみたい。委員長は東大名誉教授の山内昌之。以下敬称略で委員として、経団連名誉会長の今井敬、作家の阿刀田高、野球の王貞治、歌舞伎の松本白鸚、元最高裁判事の大谷剛彦、女優の紺野美沙子、元検事総長の但木敬一。全11回で51頁の提言書を提出。この有識者会議のテーマは①大相撲の多国籍化の流れの中での相撲の伝統の継承発展②協会独自の自己規律=ガバナンスの指針。その展開は1️⃣大相撲がめざすべき方向性2️⃣求められる諸施策3️⃣スポーツインテグリティと自己規律。まず1️⃣については7つを提示。①大相撲の多国籍化②柔道の国際化と剣道の海外普及③大相撲の文化変容④高見山の「入日本化」と大相撲のたしなみ⑤大相撲のめざすべき方向性⑥相撲道の継承発展と国際親善⑦日本人力士の育成。そして2️⃣では①相撲部屋の充実②外国人出身力士の指導者と日本人師匠の自己陶治③師匠に対する指導監督の強化④年寄名跡と一代年寄⑤日本人力士への相撲道の教育。最後の3️⃣では①大相撲におけるスポーツインテグリティの向上②日本相撲協会の自己規律の指針(ガバナンスコード)。
 主たるテーマは大相撲力士の多国籍化への対応。特に柔道と剣道の国際対応について触れている。国際化に踏み出した柔道に対して、剣道は海外普及に努めた。これはルール改正における主導権が日本にあるのか、国際団体にあるのかが課題。その結果、柔道では勝負重視のスポーツ性が文化性を凌駕したと断じる。従って外国人力士の「入日本化」が重要とされ、最初の外国人力士となった高見山大五郎=東関親方の功績が讃えられた。その他、部屋制度の維持、外国人力士の1部屋1名、力士の男子限定、一代年寄の存在意義への疑問などが呈された。正直言って『これで済めば何の問題もないが、実際にはこの先角界はやってゆけないのではないか?』と感じられた。大半が外国人力士の不祥事への非難であり、評価に偏りが見られる。また入門者減少についても「より日本人力士の確保を目指すべき」との指摘には、日本や角界が置かれている状況を楽観視し過ぎている。また今の時期に一代年寄について言及するのは、白鵬への牽制と取られかねない。もちろん日本の大相撲が、世界相撲選手権と同じとは思えないし、同じ位置付けが望ましいと思えない。しかし角界の競技人口の確保のために、部屋の外国人人数制限や親方の日本国籍取得などは早くメスを入れないと、いくら人気があっても運営団体としての弱体化に歯止めはかけられない。他にも公益法人として、国会でも問題視されていた高額な年寄株の取引など、有識者会議が取り上げるべきテーマが取り上げられておらず、あまりに現状追認にして、角界改革に消極的な論議と言わざるを得ない内容と感じられた。

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