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姉小路祐「緊急発砲」

姉小路祐「緊急発砲」(徳間文庫)を電子復刻第55弾。横溝正史ミステリー大賞を受賞された日本のミステリー作家。この小説は付審判という珍しいテーマ。付審判は、公務員の職権濫用の不起訴処分にして不服申し立てを請求する裁判。今回は警察官に対する付審判だったので、警察と利害関係を共有しやすい検察官を、弁護士が務める逆転現象。
 京都の吉田山公園で襲われたカップル。襲った犯人は警官の発砲で死亡。しかし当該カップルは現場から姿を消した。死亡した襲撃者は極左の活動家。内縁の妻からの「これは殺人だ」と訴えで、付審判に至る。同じ大学の同僚教授と不倫関係が破綻して、弁護士として心機一転した香月江理奈は、この付審判の検事チームに加わる。
 『この付審判で警官を有罪にするのは無理があるだろう』と思ったが、事件の解明は、何層にも思わぬ深みを見せる。果実はフィールドワークによって得られる。そして警察、公安、検事の強固なネットワーク。そんな権力組織に楔を打ち込む勇気は、新米弁護士だからこそできたことかもしれない。
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