名入れタオルの「糸力」
地元に「糸力」という会社があった。名入れタオル専門の会社だった。タオルの糸を表現した社名だったのだろう。加えていとう社長の苗字にも引っかけた社名。僕は内心『なかなか洒落たネーミング』と思って感心していた。大勢でだったが、元々職場で社長と一度だけゴルフにご一緒した。そのご縁で、元職場の会社の設立記念に社名とロゴ入りの名入れタオルを取引先に配布するために「糸力」で作った。今はさほどでもないが、20年くらい前までは年末年始に、社名入り名入れタオルを配るというのは、よくある風習だった。
その後に「糸力」の直ぐそばに引っ越した。会社の前を通ると会社兼自宅の前に社長が出てきていたりした。『僕のことを覚えていないかなあ?』と思ったが、遂に気がついてくれなかった。こちらも敢えて声はかけなかった。つい先日「糸力」の玄関に貼り紙がしてあって、会社を閉じることが告知されていた。今どき名入れタオルなんて、そうそう需要もないだろうから『仕方ないだろうなあ』と思ったが、何とはなしに寂しかった。