川北義則「ボケの品格」
川北義則「ボケの品格 清く、気高く、いさぎよく」(徳間書店)。ベストセラー「男の品格」の著者も82歳。半年前に医師から認知症宣告を受けたとのこと。認知症と言われて、著者はもちろんショックは受けたそうだ。しかし「なったものはしかたがない」。「折り合って暮らしてゆこう」ということだ。
老害については、厳しく指摘している。若い患者を待たせて病院でたむろする婆さん、コンビニで日本語が不自由な外国人店員を怒鳴りつける爺さん、電車の席取りに殺到する花見帰りの老人グループ。実名こそ挙げていないが、いくつになっても、世の中には地位にしがみついている大手マスコミのトップ、いまだに諸団体の代表を幾つも務めている政治家、若く有能なスポーツ選手にパワハラや暴力を振るう監督者などの存在にも苦言を呈している。世の中に求められているのは、地位ではなく、技術なのだと。大手企業に勤めてきたり、弁護士や政治家など先生と呼ばれる職業人には、この手の老害を撒き散らす人が多いという。自分も心せねば。
過去の話より、今の話を優先。若い人と接してゆくこと。怒りに身を任せる前に深呼吸すること(老人は怒りっぽい)。長話ししないこと。相手の話に耳を傾けること。常に「ありがとう」を忘れない。労られることを当たり前に思わない。本書に並べられている文章だけをピックアップしてみると、当たり前な人生訓に見える。しかし「異性に関心を絶やさない」という下りを読めば「バイアグラだって、使って自信がつくなら有用」「81歳でAVデビューした女優は現役健在」のような度肝を抜く記述もある。要は好奇心を失わないこと。常にキョロキョロして生きてゆくこと。そして何もないではなく、とにかくどんなことでも一歩前に出てみること。http://www.tokuma.jp/bookinfo/9784198650001