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香納諒一「女警察署長 K・S・P」(徳間文庫)

香納諒一「女警察署長 K・S・P」(徳間文庫)。電子書籍版はこちら↓
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 シリーズ第4弾。いつのまにかK・S・P(歌舞伎特別分署)署長になった村井貴理子。かつては署長秘書だったが、意外にも特捜部捜査に頭角を現して、主人公・沖幹次郎たちの上司となった。今回は冒頭から、都知事が直々に紹介する米国🇺🇸石油王からの特命依頼という、ただならぬ案件。それも貴理子が大ファンである女流バイオリニストであるバーバラ・李が石油王の妻。現代のストラディバリウスとされる陳莫山が作った、彼女のバイオリン名器の奪還がテーマだった。華やかな舞台とは逆に、捜査は難航を極める。再来したチャイニーズマフィアの新星・朱栄志。チャイニーズマフィアにショバを渡すまいとする、歌舞伎町最大の暴力団・神龍会。そして裏に潜む新たな勢力の進出が、捜査を迷宮化する。切り札に使われる人質たち、次々と凶弾に出る犠牲者。貴理子や沖すらも無事ではすまない。埼玉県警から神奈川県警までの広域を股にかけて暗躍する闇の集団の実態とは? 果たしてバイオリンの行方は?
 村上貴史氏の解説にある通り、このミステリーは家族物語の組曲である。沖と父親の不和と悔恨、妻子を爆殺された円谷太一刑事の恩讐、朱栄志姉弟の秘密、ウェスラー・バーバラ夫妻のすれ違い、偉大な父・陳莫山の存在に苦しむ息子・陳弦悠、被弾した刑事たちの家族に謝罪する貴理子。そして何より許されない立場で、お互いに惹かれる貴理子と沖。それぞれの想いを、無法と欲望と規範が引き裂いてゆく。巧妙に幾重にも張り巡らされた蜘蛛の巣は、奥に行くほど、それぞれの陣営から新たな仕掛けが用意されている。追う者にも、追われる者にも、余裕をかましているようでいて、それぞれの葛藤が軋み合い、読んでいて胸が苦しくなる。


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