月村了衛「非弁護人」
月村了衛「非弁護人」(徳間書店)。電子書籍版はこちら↓
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宗光彬は脛に傷持つ元検事。同じ過去を共にする篠田啓太郎弁護士。こちらはヤメ検と呼ばれる弁護士。二人とも検察界の不合理な圧力とトラブルで職を去った。どちらも法曹界にしがみついて職を得ているが、宗光彬の場合は弁護士資格すらない「非弁護人」。裏の世界の仕事を引き受けて生きている。
宗光が立ち寄ったパキスタン料理店で知り合った、少年マリク。彼に見込まれて頼まれた、失踪した韓国人少女ソユンの捜索。気持ちにほだされて、宗光は彼の貯めた小遣いで引き受ける。しかし調べてゆくうちに、宗光は事件の闇の深さと広がりに気がつく。思わぬ犯人のターゲットを知り、事件の悪質さに愕然とした宗光彬と篠田啓太郎は、再びタッグを組むことに
本作品は三つの焦点を持つ。一つは検察界の権力への迎合と非情さ。主観的に都合の良いように真実を解釈する矛盾。宗光と篠田の二人は、自らの復讐の意味も込めて立ち向かう。二つ目は裏社会の合理化。ヤクザにだって、優秀な人材とそうでない者がいる。報われなかった者の行き着く果ての地獄。三つ目は、在日外国人への差別。その差別に根付いた犯罪の罠。少年マリクと宗光の共感が、この物語のオアシスである。