94歳で絵本作家デビューの千田佳代先生
作・千田佳代、絵・長谷川淳、編・吉田進み矢「魔女リナと猫」(集文社)。
平凡な女の子の魔女リナの800年の人生を、魔猫とともに描くファンタジー。小島信夫文学賞受賞歴を持つ女性小説家が、94歳で絵本デビュー(公式解説)。
絵本にしては字数が多い。そして章立てされているところも異質。「ま猫」というキャラクターが登場し、はじめは意味がわからなかったが、読めば「魔猫」だった。主人公が魔女で、相棒が魔猫。そこは着眼点がユニーク。そして魔女といえども寿命はある。その終わりの頃には、周りはみんな死んでいる。長く様々な人生を享受できた反面、長寿による孤独の寂しさ。長寿大国である日本にとっては、極めて現代的な切実なテーマである。かつて加地尚武「福音の少年」シリーズ(徳間書店)で、永遠の生による寂寥感というテーゼを読んだことがある。死を意識するのは子供や若者より年配者。そういう意味では大人の絵本。長谷川淳の絵は、ちょっと馬場のぼるっぽい漫画感がある。貼り絵のような立体感がユニーク。
https://www.amazon.co.jp/s?k=魔女リナと猫&ref=nav_bb_sb
編集担当の吉田進み矢氏は、かつての職場における元同僚。書店、出版社、取次を経て、図書館の司書の道を選んだ。その傍らで「絵本沼」という名称で、絵本の愉しさを大人に伝える「絵本沼ゼミ」や、絵本作家さんとのイベントを各地&オンラインで開催している。絶版絵本、非流通絵本、絵本関連雑誌の収集も含めた、絵本史の研究を生涯のテーマに掲げている。彼にとって、50代の脱サラ転進。人生は一度切り。何をしたいか一生わからない人もいる。そんなテーマと出会えたことは幸せだろう。
https://ehonnuma.com
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