原恭久「キングダム63」2つの見どころ
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BC234年、趙王都・邯鄲に手をかけるべく武城・平陽を攻める秦軍。八万対二十四万という圧倒的劣勢を強いられる桓騎軍。趙軍左翼に雷土将軍を捕らえられて壊走。飛信隊は「死地」と称される断崖絶壁の影丘へ向かう。そこには怪力無双の岳白将軍が率いる趙軍右翼が、先発の玉鳳軍が瀕死の危機に葬っていた。果たして飛信隊の運命は。そして静観を決め込む桓騎から出た伝令とは何だったのか。
この巻の見どころは二つ。影丘の絶壁への飛信隊の挑戦。これはまさに源義経の「ひよどり越え」である。不可能を可能にする飛信隊の鍛錬と戦意の高さが迫力を以て描かれる。もう一つは岳白と飛信の一騎打ちシーンにおける口上。侵略者を非難する岳白と、それでは何も変わらないと切り返す飛信。戦隊ヒーロー物を「悪の手先は世の中を変えようと努力するが、正義の味方は保守的に既存の仕組みを守ろうとする」とブラックユーモアで揶揄することがある。春秋戦国時代の各国の独立安寧を是とする趙の岳白と、中華統一で真の平和を目指そうとする秦の嬴政や飛信の目指すところは、まさに正義の味方と悪の手先の関係に他ならない。