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H漫画と直木賞作家作品の共通点

年甲斐もなくエロ漫画を読んだ。Hなテーマなので女性はお読みにならなくて結構。幸田朋弘「うえざっちいず」(ヒット出版)。夜中に覚醒した時に暇潰しに読んだ無料立ち読みページにウルっときて、ついポチしてしまった。ティーンズラブというか童貞処女の初体験物語集であるが、各短編のタイトルが、ヒロインの名前に天候っぽいタイトルがついている。作者によればそれは「なんとなく」であって、深い意味はないそうだ。
 心が動いた作品は巻頭にあった「みもりサイクロン」。隣に住んでいる「みもり」という少し年上の女の子は、真向かいに向き合った2階の窓から主人公男子「俺」の部屋に、しょっちゅう屋根越しに無断侵入してくる幼なじみ。特に「俺」が女性に告白してふられた時にやって来ては愚弄嘲笑して傷を抉る。またもや「俺」が失恋して帰ってきたら、部屋で「みもり」がグーグー寝ている。迷惑なので追い出そうとしたが、その時に「俺」は「みもり」が意外にグラマーなことに気がつく。思わずTシャツに手をかけるとノーブラの衝撃。「みもり」が眠っていることをいいことに「俺」は「みもり」にけしからぬことを始める。「俺」は途中で「みもり」が実は目覚めていたというか、狸寝入りだったことを知る。そのまま二人は初めてのメイクラブの世界に突入。196頁の本のうちの僅か16頁の作品なのでネタバレしても構わないかと紹介。
 要は「みもり」は元々「俺」が好きだったのである。だから「俺」が他の女性に夢中になると、心配で仕方がない。そして部屋で寝ていた時にノーブラだったのも「俺」への挑発。ということは「俺」は相当の鈍感である。しかし「みもり」は幼なじみという胸キュンな存在。自分にはこんなラッキーな体験は全くなかったが、少女漫画にありそうな展開でもある。昨年11月に刊行された青山文平先生の「底惚れ」も似たような筋立て。もちろん青山文平先生は直木賞作家であるからして、文章は格調高く、しかも時代小説であった。だけれども物語の言わんとしていることはあまり変わっていない。本作品はH漫画ではあったが、なかなか文才を感じた。よく集英社コバルト文庫あたりから、故山本文緒先生のような優秀な作家が輩出することがあるけれど、官能漫画界からもそのようなことがあれば痛快だなと思う。

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