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鳴神響一「警視庁ノマド捜査官 朝倉真冬 男鹿ナマハゲ殺人事件」

鳴神響一「警視庁ノマド捜査官 朝倉真冬 男鹿ナマハゲ殺人事件」(徳間文庫)。電子書籍版はこちら↓

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 警察庁長官官房審議官直属の「地方特別調査官」。朝倉真冬は都道府県警の腐敗を探る覆面捜査を担当。しかも任務上、29歳にして警視(警察庁長官をトップとした10段階の上から5番目、つまりかなり偉い)を張っている。これも明智光興警視監(上から3番目のランク、つまり雲の上のクラス)からの密命ゆえ。彼女が対決するのは、地方における政界や経済界と警察幹部の癒着と不正。いつも単身でゼロから乗り込んで、先ずはきっかけをつかむ人間関係作りから入ってゆく。舞台は必ず風光明媚な観光地で、まさに旅情ミステリー。しかも若くて美しいヒロインであるにもかかわらず、想いを寄せた人に毎度振られて寅さんのような結末となる。

 今回彼女が訪れたのは、なまはげで有名な秋田県男鹿市。さらにWヒロインの登場である。秋田県警刑事部捜査一課の新藤和美警部補(上から7番目)。身長171cm、真冬と同じく29歳、美貌でスタイル抜群。秋田県警の捜査停滞に疑問を感じ、今回の捜査の水先案内人になる。そして真冬が好感を寄せる東北大学大学院の博士課程で、ナマハゲ研究家の浪岡顕人。真冬にとっての「ナマハゲ」入門の役を務める。彼の説明する「ナマハゲ」と「なまはげ」の違いには含蓄がある。浪岡青年は事件の進展の中で、意外な役を務めることになる。事件が起こった場所は「真山の万体仏」。真山神社の堂内に一万二千もの木彫の仏像が安置されている。想像するだけで神秘的な場所だ。第二の事件は寒風山爆発によってできた、碧の美しいマール湖「三の目潟」。いずれも民俗学者の祖と言われる菅江真澄の研究を下敷きとしている。卓抜した舞台設定の魅力こそ、本シリーズがただのミステリーである以上に輝く要素である。


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