摩耶雄嵩「化石少女」
摩耶雄嵩「化石少女」(徳間文庫)。電子書籍版はこちら↓
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百年以上の歴史を持つ京都の名門私立、ペルム学園。なぜか次々と学園内で起こる殺人事件。古生物部は、部長の三年生・神舞まりあと平部員の二年生、桑島彰の二人だけ。化石オタクのまりあだが、事件発生になると熱血探偵に早変わり。事情があって彼女のお守り役となっている彰。いつもいい線突いているまりあだが、彰が推理の矛盾をバッサリ指摘。結局はいつも未解決で、読んでいてフラストレーションがたまる。しかし実はまりあの推理は全て図星。
学園に存在するクラブがユニーク。古生物部をはじめ、パワースポット部、エアホッケー部、叡電部、嵐電部、コスプレ部、とかふつうの高校ではあり得ない多彩さ。そこがまた私立のお坊ちゃんお嬢さん学校らしいユニークさ。著者はそういう場面設定でも遊び心が豊か。
校内で次々に起こる殺人事件。その背景には、クラブ数の細分化と増え過ぎによる「過疎部問題」がある。統制管理する生徒会と過疎部たちの対立関係。何しろ部室や部費には限りがあるから。しかしそれが殺人事件にまで発展するところが小説ならでは。読んでいてゲームの世界に迷い込んで、自分が「不思議の国のアリス」になったような気分に陥る。
ヒロインのまりあが愛らしい。美人なのに、化石にしか興味がない。いつもツナギを着て、化石の削り出しにハンマーやタガネを握っている。そのツンデレぶりに、職業婦人のような、本人が意図しない色気も感じられる。事件が起こった時だけに、探偵業に乗り出す野次馬根性。そこもまた愛らしい。登場人物たちは、いずれも個性的。特に女性たちは、よりどりみどりの才女別嬪揃い。特にまりあの敵役である、生徒会メンバーたちは個性が際立っている。主人公の彰は無個性キャラで従僕の義務と言いつつ、実はまりあにホの字な結末。苦しい恋の行く末は果たして。