書評。「82年生まれ、キム・ジヨン」

世の男性よ、黙って読め。

82年生まれ、キム・ジヨン」という少し風変わりなタイトルのこの小説。
人に勧めたこともあるが、ちゃんと読んだことはなかった。
ようやく読了したので書き残す。
一言。「世の男性よ、黙って読め。」
男女平等なんて絵に描いた餅なのに、
全然わかってない!
そんな気持ちを本書の「キム・ジヨン」が代弁してくれている。
この本を読み終えた時の苦々しい感触を
男性陣なぜひ忘れることなかれ。
程度は違えど、少なくとも日本で生きている女性は経験していることだらけ。

妊娠したくないと思うのは自然だ

この本の中で傷口をえぐられたような痛みがあるのは結婚〜妊娠、出産のあたり。
それは私がまさにこの局面にいるからだろう。
幸い、「(子供は)まだなの?」という面倒な親族はいないし、
そういうことを軽く聞いてくる友人、知人には
「不妊治療3年目なんだよね」これで一発、黙る。
独身に「なんで結婚しないの?」と聞くよりも
かなり複雑な問題が絡んでいることをお忘れなく(余談)

キム・ジヨン氏が妊娠する直前にも、
まだ妊娠は考えていないのに、という描写がある。
そりゃそうだ。失うものが多すぎる。
夫の「俺も手伝うよ」に対して、「手伝う」っていうのやめてよ、というやりとりが、痛切だった。
いろんなことを考えたら、妊娠したくないと思って当然ではないだろうか。
損得で言ったら、申し訳ないが「損」が大差で勝つ。
もちろん、金銭面にはない価値があることは百も承知だ。

世の男性陣よ。男性はつわりを経験せず子を持つことができるんだ。
それだけでもありがたいと思え。
そして、無痛分娩に反対するなら、出産の痛みを体験できる装置があるから
ぜひやってみるといい。

労働環境もまた然り。

男性と女性が平等だ、って、女性側が言っているのを見たことがありますか?
どうして男性側が性差別の問題でデモ行進をしないんですか?
答えは簡単で、世の中の仕組みの大半は男性が作ったものだから。
最近、起業家などの本や動画などをよく見ているが
大半は自分で家事や子育てなんかしてないですよね?
女性起業家で「ママ」をアピールポイントに使っていない人の割合少なくないですか?
結局美人で気立がよく、賢いが野心はなく、男性を立てることができる女性が最強。
そんな社会で、どうやって平等に?
完全な平等など目指さず、それぞれの役割を適材適所で全うした方が幸せだ。
なので、いまの社会の仕組みのままで労働環境を平等にしようなんて無理ゲー。

難しい「フェミニズム」の本を読む前に、この本を読もう

はっきり言って、大事件は起きないし、
魔法もないし
輝かしい成功もない。
だからこそ、この「居心地の悪さ」「腑に落ちなさ」が
問題提起となるのだ。
フェミニズムを説明するよりこの本を読むべし。
入門書としてとても良い。
ここを理解してから、小難しい本を読もう。
映画化もされているので、こちらもぜひ。

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