【言語】人件費の『人件』って他に使われてる? ~絶滅危惧種な言葉たち~
(最終更新日:2021年 4月3日)
日本語は平仮名・片仮名・漢字・ローマ字と多種多様な文字を使用して文章を構成しております。
その中でも、漢字は古くから公式文書に使用され、そして現代でも公式の検定があるほどに格式の高い文字となっております。
そんな漢字ですが、「もうこの使い道しか無くね?」という漢字が存在しているのはご存じでしょうか?
例えば『人件費』の『人件』です。辞書を引いてみると、
人事に関する事柄
(コトバンク:デジタル大辞泉)
と書いております。
「いや、じゃあ人事費でいいじゃん!」というツッコミもありつつも、やはりやむにやまれぬ事情があるのでしょう。
というわけで、今回はこれらの熟語の紹介と、「今後こんな使い方もできるんじゃね?」ということを考えていこうと思います。
・人件:人件課、人件権の行使など
これらの言葉を、「絶滅危惧語」と呼んで扱っていこうと思います。よろしくお願いいたします。慣用句…とまではいかないかなー?どうなんでしょうね。
意味の引用は原則としてコトバンク(デジタル大辞泉準拠)
より行っております。
可及的 -速やかに
[副]及ぶかぎり。できるだけ。「可及的速やかに処理したい」
どうやら探してみると「可及的速やかに」というフレーズでワンセットということではあるようですが、コトバンクには『可及的』で一つの項目があります。とはいえ、意味を見てみるとかなり使い道がありそうな言葉ですよね。
「可及的詳細にチェックいたします」
「顧客のクレームには可及的な対応が求められる」
遺憾なく -発揮する
① 心残りになることなく。残念とは思わないで。
※邪宗門(1909)〈北原白秋〉例言「少年時の長篇五六及その後の新旧作七十篇の余は遺憾なく割愛したり」
② (副詞のように用いて) 十分に。申し分なく。洩れなく。
※囚はれたる文芸(1906)〈島村抱月〉七「第三期のラファエルは、〈略〉サン・シストーのマドンナを以て、遺憾なく表出するを得べし」
コトバンクによれば、20世紀初頭ではまだ他の使い方があったみたいですが今では発揮するばかり。そもそも発揮するのも「実力」くらいしかないので、もうこの「実力を遺憾なく発揮」というのがセットフレーズという…。Why Japanese People!
(ちなみに『発揮』には実力のほかにも腕前・精神などが付くみたいですね)
「久々に君の手料理を頂いたが、遺憾なく旨いよ」
「只今留守にしております。御用の方は、遺憾なくメッセージをどうぞ」
夢枕 -に立つ
夢を見ている枕もと。
大体恨みを持った人が一度は使うであろう「夢枕」。座っちゃいかんのか?疲れるでしょ。これはうさぎ跳び文化が跋扈していた古い日本の悪習です。
というわけで、もっとクリーンなイメージを持たせるためにも、枕元にはもっと睡眠環境改善できる言葉を添えてあげましょう。
「夢枕にピッタリなアロマ」
「今夜はクリスマス。夢枕にプレゼントを用意しないとね」
膾炙する 人口にー
[名](スル)《「膾」はなます、「炙」はあぶり肉の意で、いずれも味がよく、多くの人の口に喜ばれるところから》世の人々の評判になって知れ渡ること。「人口に膾炙する」
もう少し調べてみると、どうやら『人口』は人の数のことではなく、人の口自体を指すようです。しかしまあこんな特殊な漢字を使う熟語なのに、人口にしか使われないのはもったいないです。そういった意味では次の項目も然りです。
「その革新的なコントローラーはゲーマー中に膾炙した」
「やがて納豆もニューヨーカーに膾炙すると思うよ」
溜飲 -が下がる/-を下す
飲食物が胃にとどこおって、酸性の胃液がのどに上がってくること。
元々は医学の用語「急性胃炎」の関連語だったようですが、いつの日か「溜飲が下がる」という言い方で『たまっていた鬱憤などが晴れる』という意味合いになったフレーズです。
果たして溜飲は吐き出たり、こみ上げたりするのです。下がるばかりの溜飲であれば、医者はいらない(断言)
「今日も上司に叱られた。溜飲が口から噴き出てきそう」
「おかしいな、二日酔いでもないのに溜飲が上がってきてる」
相好 -を崩す
1 仏の身体に備わっている特徴。32の相と80種の好の総称。
2 顔かたち。顔つき。表情。
元々由緒のある言葉ですね。仏様の特徴だとは。
ただそれも今や昔の話。仏へのリスペクトは何のその、顔をほころばせて喜ぶことを「相好を崩す」と表現します。
「美容整形の技術進歩にも関わらず、AIの顔認証技術は相好を瞬時に認識する」
「相好が固いよー!リラックスリラックス!」
予断 -を許さない
(スル)前もって判断すること。予測。「形勢は予断を許さない」
そろそろ、許しません?笑
人件費の『人件』と同じで、普通に使えそうなこの『予断』ですが、コトバンクにもしっかり『予測』という関連語を出してくることで、「ここはお前の出番じゃねえと言ってますね。確かに「予測」を使ってしまえばそれまでですが…。
「俺が予断するに、お前はそのコーヒーの違いはわからねぇ!」
「私の好みの色?勝手に予断しないでよ」
まとめ
言葉というものは常に新しいものが生まれ、古いものは廃れていきます。
上に紹介した言葉たちは、もちろん昔はたくさんの用法があったとは思うのですが、栄枯盛衰を経て『ここにしかくっつかない』という絶滅危惧種になったのではないか?と予想します。
ある単語にしかくっつかなくなった言葉に想いを馳せれば、古の言葉にロマンを感じますね。
見つかったものは随時更新をしていこうと思います。
もし何か発見などがあれば、コメントお待ちしております!
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