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Full-Foilモダンキューブドラフト参加レポート

どれほどこの日を待ちわびただろうか。どれほどこの幸運に感謝しただろうか。
ついに、“それ”を遊ぶ時がきたのだ。

こだわりの特殊仕様カードたち
土地もフルアート仕様のものが揃っている

モダン環境に存在するパワーカードたち480種480枚。そのすべてがFoilカードというプレミアム仕様。推定時価総額は余裕の100万超え。モダンを愛好するプレイヤーにとって、垂涎もののコレクションといって差し支えないだろう。その全貌はこちらのリストをご覧いただきたい。(Googleスプレッドシートへのリンク
そして何より、このコレクションは“遊べる”のだ。

都内某所、普段よりdiscordでオンライン対戦をしている友人が一堂に会し、“それ”が開催されようとしていた。
キューブドラフト。オリジナルのカードプールから15枚ずつランダムに振り分けてパックとし、それを使ってドラフトを行うフォーマット。MOやアリーナで不定期に開催されるものが有名だろうか。それのリアル版だ。通常のドラフトブースターを用いるものと異なり、めくれるのはどれもがモダン環境を定義づけるようなパワーカードたちだ。

マジックを代表するパワーカードの面々

……いや、申し訳ない。「モダン環境を定義づける」というには語弊があった、訂正が必要だ。なぜならここには、“無法者”たちが紛れているのだから。

許されざる顔ぶれ

モダン環境を破壊し、追放されてきたアウトレイジたち。それらが4枚入れられる構築戦では許されるはずもないが、キューブドラフトではそもそもカードプールに1枚ずつしか存在しないため、禁止カードの絡む凶悪な動きはどうしても再現性が低くなる。カードの枚数上、パックに含まれない余りカードも生ずるので、狙ってコンボを作るのは難しい。
しかし、できないとは言ってない。歴史に名を残すようなぶっ壊れシナジー、それを体験できるチャンスがここにはある。相殺独楽も、双子コンボも、ポッドからサイだって可能だ。

さらには、現代のパワーカードと往年の禁止カードのコラボレーションよる、新たな凶悪ムーブを開拓できる場でもあるのだ。

ウルザの物語からサーチされたのは……
頭蓋骨締め!
先手1T目、土地が置かれる前から
駆け引きは始まっている
出産の殻からオムナスのサーチできるデッキ

店に行っても、大型イベントに参加しても得がたい体験。その性質上、気心を知り、信頼ある間柄でなければ参加できないシークレットイベント。主催し、招いてくれた友人へ切に感謝するとともに、以下のレポートでその貴重なプレイ体験をささやかながら共有できればと思う。

お披露目・ドラフト開始

仰々しいアタッシュケースから取り出された、一点もののコレクションセット。長い歴史にわたる膨大なカードプールから選び抜かれ、拘り抜かれた、珠玉の英雄たち。

ドラフトでお馴染みのランドステーション、これももちろん“Full-Foil”だ。

余韻も冷めやらぬまま、シャッフルによる無作為化、15枚ずつのパイルに振り分け、一期一会のパックが形作られていく。

参加人数は7名、卓に存在するのは21パック315枚。手に取ったパックをオープンし、ドラフトが始まる。……見たこともないドラフトが。

1-1ピック、あなたならどれを取る?

なんだこれは。各々が驚きと歓喜の声を上げる。
誰もが言った。「強すぎる……」リストは事前に共有されていたし、禁止カードの入っていることも周知されていた。しかし目の当たりにするまで、誰もその真の意味を理解していなかったのだ。

ピック・デッキ構築(1回目)

阿鼻叫喚冷めやらぬまま、1-1ピックを検討する。
キューブドラフトの特徴として、全体的なカードパワーが高く、基本的に外れカードは存在しないため、それらの中でもより強いカードを取れるような受けを広くしておくことが大切だ。具体的には、多色化をサポートする土地を優先度高くピックしたり、どんな色でも使える無色カードを優先するなど。しかしそれでも、全部強くて何を取ったらいいかわからない。

1-1ピック再掲

まず目に入るのは禁止カードの「頭蓋骨締め」だ。小粒クリーチャーが上手く用意できれば驚異的なドローエンジンとして働く。「忘却石」や最近スタンで禁止された「食肉鉤虐殺事件」などの全体除去もあり、飛行速攻のクロックで速やかにゲームを終わらせてくれる「雷口のヘルカイト」。構築では見かけないが、起動型能力で何度でも反逆の衝動が撃てる「蠱惑的な船員」はリミテッドを破壊するカードだ。
最終的に頭蓋骨締めと迷った末、青赤好きなのもあって「火と氷の剣」をピック。十手ほどではないものの、全てのクリーチャーをフィニッシャー格に変貌させるリミテッド破壊カードであり、無色のためどんなデッキにも入れられる。

さて、今回は見知った友人たちとのカジュアルなドラフトということもあり、オープンしたカードに叫び声を上げたり、ピックに悩むパックの写真を撮ったり、ピックしたカードを確認しながら悩んだり、回ってきたカードに叫び声を上げたり……大丈夫? 友人の精神が心配になってきた。
隣席のエムラクール大好きプレイヤーからは「こういう巡り合わせなんだな」という趣旨のコメント。絶対エムラクールピックしたじゃん。モダン環境でよく見るカードが収録されたキューブのため、自分がお気に入りのカードを取るという楽しみもある。もちろん、美しいFoilカードを眺めるだけで十二分に楽しい。

1パック目のピックはその後、1-2鏡割りの寓話、1-3飢餓の潮流、グリスト、1-4赤白フェッチ、1-5赤黒ショック、1-6冥府の掌握、1-7黒赤タリスマン、1-8雷口のヘルカイト、1-9赤緑ハイブリッドと、ミッドレンジ寄りのピックから、土地の優先度をかなり上げて受けの広いピックを進めた。寓話を取った時点でできれば墓地シナジーを取ってリアニをサブプランに据えたいと考えていたが、関連カードにあまり巡り会わなかったため、足回りを固めていった感じだ。1-10約束の終焉、1-11繁殖池の後に、1-12墓破りのラミアと、墓地へサーチできるカードを取れたので、リアニへの渡りがついた。

ピックの途中、たまたま会話が止んだタイミングで、隣から一言。

「お前はオレのところに来い」

突然のイケメン台詞に一同爆笑。後から聞いたら、エルドラージ大好きプレイヤーはコジレックをピックして思わず呟いたらしい。こちらは最終的にイルハグシュートへと組み上がった。

残りはある程度ダイジェストで進めよう。二パック目の初手は以下の通り。

2-1ピック、何取る?

2-1で闇の腹心を取ったところで、2-2ピックはアトラクサ!

φ好きの主催がパックから剥いた魂のカード

リアニへ向かう強力な理由ができたところで、ルーティングや釣り竿を探しながら、相手の妨害をする除去、ルーティング手段や踏み倒しを集めていく。

しかし、肝心の釣竿が見つからないまま三パック目へ。初手は以下の通りだ。

3-1ピック、何取る?

ファッティはかなり流れていたので、釣竿がとにかく欲しいと思いながらカードをめくっているうち、ついにそれは現れた。

モダン禁止、最強リアニカードの一角

そして、終盤にして続々と集まる関連パーツたち。マナベースも強固なものが揃っていく。

そして出来上がったのが、グリクシスベースの5Cリアニミッドレンジだ。

小粒クリーチャーで墓地を肥やし、除去やハンデスで相手の行動を妨害しつつ、3マナの強力なカードで攻めて、隙あらばリアニを狙っていく。マナベース、マナ加速も強固で、アトラクサ素出しも見えるようなデッキに仕上がった。

対戦(1回目)

4Cミッドレンジ(×○×)

ラガバン、レン六を初めとした、パワーカードを詰め込んだデッキ。一戦目はラガバンスタートの初手に対応しきれず、レン六奥義に辿り着かれて負け。
二戦目はマナ加速しつつトリトン、グリストを展開して盤面の形成に成功し、満を持して7マナからアトラクサをキャストして勝利。

盤石

3戦目後手、墓地肥やしと強固なマナベース、フィニッシャーまで見えた完璧な7枚をキープ。勝ちを確信したのだが……

勝ったなガハハ

相手の先手1T目ラガバンに縫師への供給者を展開してブロッカーとしたところ、2T目に登場したのはなんとレン六!
マイナス能力で供給者、トリトンと除去され、誘発でアトラクサが墓地に落ちるものの、リアニを引けず、少ない赤マナ源もラガバンに追放されてヘルカイトが出せないまま負け。現代モダンを代表する2枚に、キューブドラフトのなんたるやを思い知らされたマッチだった。

緑黒ウィニー(×○×)

なんとルールスを相棒指定したほぼ黒単のアグロデッキ。墓地から帰ってくる軽いクリーチャーで構成されており、継戦能力が高いのが特徴だ。そして、初手で流したあのカードが入っている。……そう、「頭蓋骨締め」だ。ついでにウルザの物語まで入っている。
墓地から帰ってくるクリーチャーを締めでぐるぐるされ、死ぬほどドローされて負けた。グリストで勝ちにいけそうなゲームもあったが、英雄の破滅に阻まれてしまった。2種の血の芸術家によるドレインもなかなか痛く、ダメージレースを成り立たせてくれなかった。無念。

緑白アグロ(×○×)

トークンを並べてアンセムで強化して殴ってくるビートダウンデッキ。
一戦目はルーンの与え手を前に除去を抱えながらもじもじしている間にエーデリンが止まらず負け。
二戦目は異端聖戦士サリアの能力でキキジキの鏡像の能力が活かせず困っていたが、攻撃時に除去してラミアをコピーしてブロック時の魂絆でライフを守りつつ、サーチしてきたアトラクサを墓地に埋めた掘葬の儀式で釣ってなんとかまくる。
三戦目はガラクの並べたトークン軍団をライフ1で耐えて川の叱責によるバウンスで返そうとしたものの、シャライでプレイヤーに呪禁がついていたため負け。

結構強いデッキを作ったつもりだったので、結果が0-3でかなり悔しかった。普段回さないデッキ、普段相手にしないデッキということもあってプレイに拙いところも多かったが、何よりこのキューブがいかに魔境かと思い知らされた形だ。

他のデッキ

優勝はbye込みで3-0、主催の組んだポッドデッキだった。

パワーとシナジーの具現

複数の組み合わせで成立する無限コンボ、それを持ってくるサーチ、ブリンクやバウンスによるアドバンテージ、マナ加速と、安定したマナベース。すべてが揃った美しいデッキで、納得の優勝と言えるだろう。

ピック中に興奮のあまり奇声を上げ続けていて不安にさせられたプレイヤーが組んだのは、全除去フル投入のコントロールデッキだ。

大☆虐☆殺

普通のリミテッドでここまで全除去が取れることはあり得ないだろう。聞けば、緑白ウィニーを轢き殺していたとか。キューブの恐ろしさを体現したデッキと言える。

エルドラージと運命で結ばれていたプレイヤーが組んだのは、青赤ベースのイルハグシュートだった。途中用事で抜けてしまったので、再現となる。

エルドラージ魂

実際、イルハグでエムラをシュートして勝っている試合を見た。構築と遜色のないコンボが飛び交うのも、キューブならではと言えるだろう。

ピック・デッキ構築(2回目)

ひとり用事で抜けてしまったので、2回目は6人ドラフトとなった。2回目ということもあって慣れてきたのか、比較的スムーズに進行していく。ある程度端折りながらわたしのピックを紹介しよう。

1-1はかなり難しいパックだった。

1-1ピック、何取る?

勝ちに直結するカードとしてはキキジキがある。しかし、6ドラである以上卓に出るカードの枚数が少ないので、相方が来ない可能性や、トリプルシンボルがキツくて素出しできないリスクを抱える可能性が高い。
ここで、カードが痩せているとき、卓で戦略が被りそうなときは白ウィニーを試してみたい、という考えが頭をよぎり、一枚でゲームを決めうる刃砦の英雄が目に入った。このパックの中でも、検査官、護衛官、そして光輝王の野心家と、優秀なウィニークリーチャーが揃っているため、卓一で枚数を集めればいいデッキが組めそうに思った。刃砦はダブルシンボルで重めなこともあり返ってきそうだったので、光輝王の野心家をファーストピックに選んだ。

そこから、一パック目のピックは以下の通り、まっすぐ白ウィニーを目指す形となった。

右から1-1~1-7のピック
右から1-8~1-15のピック

ブリンク、トークン戦略の出目を見ながら、石鍛冶の受けを考慮して殴打頭蓋をピックしている。刃砦の英雄も無事に回ってきた。
続く2-1のパックは以下の通り。

2-1パックその1
2-1パックその2

ピック譜は以下の通り。

2-1~2-7
2-8~2-15、真ん中の黒いのなんだっけ……

そして三パック目。

3-1パックその1
3-1パックその2

ピック譜。

3-1~3-7
3-8~3-15

出来上がったのがこちら。

緑白ウィニー

青や黒のカードも取ったが、明らかに空いていてカードは足りたので2色でまとめた。1マナが多く、序盤からしっかり殴っていける構成に仕上がった。要所にブリンクシナジーも入っている。

対戦(2回目)

青黒ミッドレンジ(××)

は? リミテ?

一戦目はクリーチャーを展開しない相手に対してテンポ良く殴っていったものの、突如十手が降臨し、制圧の輝きで誤魔化そうとするも寝かせるタイミングをミスって対処できずに負け。
二戦目は検査官、サリア、キテオンを展開し、十手の破壊手段を握って詰めろまで持っていくものの、ラストターンに滅びで流され、芸術家で6ドレインされてライフも捲られ、詰めきれずに負け。サリアで十手展開→装備まで行けないのに気づかず壊れた翼構えを優先してキテオンを展開しないターンがあったのだが、そのテンポ差でキテオンが変身できず敗着となったように思う。
スカラベの神にボコられた覚えもあるけど、1ゲーム目と2ゲーム目どっちだったっけ……意外といい勝負だったのでそんなもんかと思っていたら、後でデッキリストを見てひっくり返った。リミテとは、6ドラとは……

ジェスカイコントロール(○××)

まさかのクリーチャー6

どのゲームで勝ったかややうろ覚えだが、刃砦と全体強化の組み合わせて大ダメージを与えて勝ったものの、他のゲームはマリガンがかさんだところへ丁寧に除去を重ねられて負け。1T目検査官をつまづかれるとすごくびっくりする。(素朴な感想)

超起源(○×○)

漢を感じる

2ゲーム目、超起源で出てきたファッティを悪鬼の狩人で追放してしめしめ返しの殴りで勝ちだと思っていたら直後にウギンで全部流されて負け。他は刃砦やエーデリンと全体強化の暴力で勝ち。なんとか全敗は免れた。

他のデッキ

ジャンド、パワー

どこ見ても強い、古き良き緑黒系のジャンクデッキを彷彿とさせるジャンドミッドレンジ。しかし、「普通のデッキでは勝てない」というのが使用者の感想だった。全く同感だ。このキューブドラフトで勝つには、普通に強いだけでなく、想像を凌駕するようなズルさが必要になってくる。十手、オーコ、スカラベの神のように一枚でゲームを破壊するほどのパワーカードや、無限コンボなどが必要だ。

中央に犯罪者を確認!

オーコ、オムナスを擁する4Cコントロール。戦っている様子はあまり見ていなかったが、デッキを見ただけでもその邪悪さが伝わってくる。血編みからオーコなんて出されたら月の彼方まで吹っ飛んでいきそうだが、それもありうるのが怖いところだ。

おまけ・シールドデッキ

少しだけ時間が余ったので68枚のプールからシールドデッキを作って一戦だけ遊んだ。

グリクシス御霊シュート

エムラ入りのデッキに闇の腹心入れたくないな〜でもめくれたらめくれたで面白いからいいか〜と思っていたら本当にエムラめくって15点食らってそのあとなんやかんやあって本体火力で負けてワロタ。
トリマリまで粘って御霊とエムラキープし、独楽で寓話を見つけて御霊シュートして勝ったのが印象的だった。

感想

ドラフトむっず!!!!!

ピックは割とプラン通りに進めることができたが、結果は全く振るわなかった。普段リミテをほとんどやらないので、使い慣れないデッキのゲームプランやコンバット周りの判断で細かいミスが多かったのもあるが、スケールの大きいズルを組み込んだデッキに仕上げられなかったというのもあるだろう。総じてマジック下手だな〜と反省させられるところの多い一日だった。あとめっちゃ疲れた。普段のマジックの倍くらい疲れるのを、7時間にわたって遊んだのだ。
しかし裏を返せば、とてもマジックの練習になりそうだなとも思った。普段キャントリ満載のクロパやコントロールばかり組んだり回しているので、アグロやミッドレンジの勘所も養いたいところだ。

高級感のある(というか高級な)カードコレクションを眺めるだけでも眼福だったし、気心知れた友人たちと楽しく遊べて最高の体験だった。絶対見ているだけでも面白かろうし、できれば次は動画とか配信とかやってみたいな……なんてことを考えていたりする。面倒臭がりなので実現するかはわからないが、需要があれば挑戦してみたい。

主催、並びに参加してくれた友人一同、本当にありがとう! またやろうな! 2年後に、シャボンディ諸島で! (嘘)

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