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障害者総合支援法改正の審議が進む中でグループホームの使命とは

 2021 年 12 月 16 日,厚生労働省社会保障審議会障害者部会(以下,社保審)が「障害者 総合支援法改正法施行後3年の見直しについて中間整理」を公表した.

 2021 年3月からの見直しの経過の中で,障害のある人の居住支援について,グループ ホーム(以下,ホーム)に標準利用期間を設け, 1人暮らし等への移行を訓練して推進する新 たな類型を創設する案が示された.

 社保審で 検討される以前に「障害者支援のあり方に関 する調査研究-グループホーム,地域生活のあり方-事業報告書」で,手厚い支援の必要な障害支援区分の高い人は利用期限のない現 在のホーム類型に,障害支援区分が低く,地 域での自立した暮らしを希望する人は利用期 限のある(仮称)自立生活移行型(以下,通 過型)にという2類型に整理することを提起 している.
 中間整理では,障害支援区分によ る類型は示されなかったが,基本的な考え方 の中には障害福祉サービスからの卒業という 方向性がある.この報告書は,当事者不在の まま作成されたものだ. 

 また,ホーム入居者のニーズに応えるためとしつつも,利用者が 約 14 万人(2009 年の 2.5 倍),費用が約 2,400 億円(2009 年の 3.7 倍)に増えたことを抑制 したいという意図が背景にありそうだ.

 やどかりの里のホーム入居者の中にも,1 人暮らしを目指す人や,準備を重ね,1人暮 らしに移行した人もいる.その一方で,ホー ムで暮らし続けたいという人も多い.

 今回の見直しで,拙速に通過型の類型が作られること で,障害支援区分によって本人が望んでいるに もかかわらずホームを利用できなくなることがあってはならない.ホームでの暮らしの安 心感やさまざまな経験の積み重ねの中で,ニー ズも変化する.どのような形のホームであって も,1人1人の望む暮らしに合わせた環境を整 備していこうとする姿勢こそが大事だ.

 障害者権利条約 19 条に,障害のある人が どこで誰と生活をするかを選択できる機会を 有するとある.

 一方で,安心して暮らすための社会資源は十分に整備されていない.財源 論に端を発した政策は,必ず谷間に置かれる人を作り出す.障害者自立支援法が成立して 以降,介護保険同様に規制緩和が進み,営利 企業が参入,社会福祉がサービスとして切り 売りされるようになった.事業所の数は増えたが,利益を上げることを目的とした株式会 社の中には「社会福祉実践」とは程遠いサー ビス提供事業所もある.

 住まいは,その人が生きるために最も重要 な基盤である.そして,ホームは,その選択 肢の1つであり,1 人 1 人がどう生きていき いのか,そのために必要な支援や環境を整 える使命がある.暮らしの場の選択は多様に あるべきであり,期限付きと期限なしを区別 するホームの仕組みが本当に必要なのか,社保審での徹底的な議論が重要だ.
「私たち抜きに私たちのことを決めるな」を肝に銘じ, 骨格提言に近づける審議を求めたい.

おすすめの本
藤井克徳著 JDブックレット1「私たち抜きに私たちのことを決めないで 障害者権利条約の軌跡と本質」(やどかり出版,2014)

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