遠くても近い存在
1年ほど前,大学時代の仲間たちとおよそ 20 年ぶりに再会した.横浜の中華街で中華料理を堪能し,紹興酒を飲み干し,ホテルに泊まって明け方まで語り明かした.再会を約束して別れ,その後,さまざまなことを我慢する日々が来るとは思っていなかった.
大学があるのは愛知県知多半島.当時,県外からの学生が約8割で,下宿生活を送る人も多く,再会した仲間も下宿生活の中で親交を深めた間柄だ.生活費が底をつけば手持ちの小銭をみんなで寄せ集めて食事を作り,お酒を飲んでは夜の海に繰り出すなど,同じ時間をたくさん共有してきた.在学中の交際から結婚した人たちも何組かいて,夫婦の紆余曲折も周知の仲.卒業後は地元に戻り,今は暮らす地域も関西から東北までバラバラだ.
今年の再会は叶わなかったが,携帯の SNS 上での交流が活発になった. グループトークの口火をきる人は決まって2人.1人は大学時代のニックネームが「おマメさん」.料理も DIY も完璧にこなすマメな人.もう1人は Kawasaki のバイクをこよなく愛す気配りの人.昔からバイクの操縦技術には 定評があった.「真冬の満月キレイだぞー」「最近見つけた昭和(感のあるお店)」. 2人の呼びかけから何気ない日常が交換されていく.メッセージはほぼ写真つ き.ウォーキング途中の夜の会津城,バイクで走る伊那谷,家族でおうちキャ ンプ,時には「寒波襲来でダイヤモンドダスト!」と動画も送られてくる.さながら定期に届くお便りのよう.その土地の風景やみんなの暮らしぶりが知れるのも嬉しい.時にはまじめに,仕事の悩みも相談し合う.
今は SNS 上でのコミュニケーションはあたりまえ.それでも互いを知り尽くした4年間を共有する仲間との SNS 交流は,友人と会う機会が減った今のささやかな楽しみの1つ.再会できる日を待ちながら,遠い地にいても確かな つながりを感じる,そんなひとときを大切にしたい.
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さいたま見沼よみさんぽ Vol.37(公益社団法人やどかりの里,2021)