落日に想う~大好きだった女の子が微笑んで逝った話~気持ちの整理の為に
菊ちゃんとの出会い
私の大好きだった女の子が、昨夜、私の声を聞きながら、笑顔で旅立った。
彼女の名前は菊ちゃん。
あれはもう20年ぐらい前だっただろうか。
菊ちゃんと私は某有名パン工場のスイーツ部門で出会った。
20代の頃の私は、バイトしては旅に出て、その時その時で色んな仕事して、まあ、その日暮らしの根なし草の延長が今中国暮らしの私なのだが、当時、そのパン工場では何と四年も潜伏していた。
潜伏というのは、私はこの時、イオンとかで出店してるような駄菓子屋で働き、車であちこち回るようなことをやっていたのだが、この時のボスが小悪党というか、昭和の親分気取りのチンピラだった。
で、まあ簡単にいうと
給料未払いのうえ、田舎の出店先に放置され帰れなくなる。
↓
人情家の流れ者に助けられ帰還。
↓
チンピラを訴えようとしたが脅され、地元では働けなくなる。
↓
兄弟分の友人が勤めるパン工場を紹介され、しばらくそこで働くことに。
という流れ。
当時はオウムの人とかも潜伏してたのが後でわかったぐらい、こういう工場って紛れるとわりと安全なところがある。帽子とマスクで顔はほとんどわからないし。
そこで出会ったのが菊ちゃんだ。
菊ちゃんは生ケーキを作るラインで生クリームを絞っていた。
菊ちゃんのしぼる生クリームは芸術的でスピードも速く、パートの菊ちゃんは社員より誰より仕事ができる子だった。
寡黙で一匹狼で、淡々と黙々と働く菊ちゃんはかっこよかった。
色白で白い工場着が映えるというか、歩き方もさっさとしてて、マイペースで無表情。
人と接したくないからここにいるというようなことを聞いたのはだいぶ後になってからだ。
私は菊ちゃんとはロッカーが近くて、無駄話90%で一人でもずっとしゃべってられる人間なので、とにかく話しかけまくった。
昔から人に群れず自分がしっかりあるような子は大好きで、クールで誰にも媚びず、疲れたとかぼやくこともなく職人のように生クリームを絞り続ける菊ちゃんに、私はもう恋してるんじゃないかってぐらい毎日毎日話しかけ続けた。
それはまるで野生動物を手なづけるような感じで、次第に菊ちゃんは少しずつ私に心開いてくれて、言葉も少しずつ交わせるようになり、本かCDか貸し借りまでしたような気がする。
頭ぽんぽん事件
菊ちゃんは知れば知るほど魅力があった。
一見クールで冷たいようだけど、実はものすごく照れ屋で、すぐ顔が赤くなる。
その菊ちゃんが真っ赤になったエピソードといえば、まちがいなく旦那さんの頭ぽんぽん事件だろう。
それはまさに事件だった。
あの菊ちゃんが恋をするなんて!
相手は、同じところで働く社員のKさん。
これまたこの人も一匹狼というか、周りからは怖いみたいに言われてた人だった。
ライン作業からはみ出して仕事しがちな私は、Kさんと二人で餅つきのようにミルフィーユを作ったりしていた。
私がクレープ生地を重ね、そこにKさんが生クリームを塗る。
それを12枚分ぐらい重ねて積み上げる。まさに餅つきみたいな。
これがとにかく暇である。単純作業を二人でずっと向き合ってやる。
私はKさんにいつも何か暇つぶしの話ないか的に聞かれてた気がする。
まあ私が話してたことは大半が菊ちゃんのことで、我が推しがどれだけ可愛いか、どういう魅力があるか、今日推しとどんな触れ合いがあったかなど、恋愛脳の浮かれバカのように毎日語っていた気がする。
意外性とギャップ萌えにKさんも次第に菊ちゃんの可愛さがわかってきて、推しの尊さが伝わり私もうれしかった。
また私は菊ちゃんにもKさんの話をよくした。
Kさんは怖そうだが話してみると意外性もありユーモアもあり、優しいところもあった。
どちらも間接的に人が褒めるってことで効果てきめん、私を通してお互いに興味を持ち始めたのかもしれない。
そしてある日私は目撃した。
Kさんが菊ちゃんの頭をぽんぽんとなでたあの場面!
「えらいえらい」みたいな。
そして菊ちゃんが真っ赤になった。
おおおお、これがうわさの頭ぽんぽんスイッチかぁ!!!!
それは菊ちゃんが恋に落ちた瞬間? いや、もう落ちてた?
一体いつから???
てか私もKさんに頭ぽんぽんされたことあるけど、スイッチ入らんぞ、私が菊ちゃんにぽんぽんしてもこんな赤くならんぞぉ!!!!!
とにかく衝撃だった。
それから二人は順調に交際し結婚し、菊ちゃんは二人の男女を授かる。
空白の時間
私は四年間その工場で働きながら、お金を貯めてはヨーロッパなど旅行に行ったりもしていたが、冬の通勤がつらいという理由で辞めた。
もともと菊ちゃんはLINEもやってなくて、マメに連絡するほうでもなくて、私も東京に住んだり、結婚したり、中国行ったり、離婚したり、色々あって、連絡をとってなかった。
それに加え、私の悪いところが発動。
私がどんなに誰かを好きでも、相手は私にそれほど関心がないという思い込み。
もうこれ完全に母親の影響による愛着障害の一種なんだろうが、自分は色んな人が好きで、愛情を惜しみなく注ぐが、それは自分には返ってこないというあきらめというか、実際は余りある愛情をもらっているのに、受け取るのが苦手なのだ。
自分にとって特別な人、大事な人はいても、自分を同じように大事に思ってくれるとは思っていない。
だから自分の好きな人は自分のことそんなに好きじゃないと思ってるし、少しでも好かれてたらうれしいけど、少しでも避けられたらもう嫌われてると思うから、自分のほうから閉じるというか去る。
自分は連絡マメなほうで、自分から連絡することが多いけど、ある時ふと気づく。
「あれ? 連絡してるの私だけだな。私から連絡しなければ、別に相手から連絡するほどの関係じゃないんだな」
この考えはよくないと友だちに言われる。
みんながみんなそんなに人と連絡とらないし会わないと。
また別な友人は、子育て中だろうが忙しかろうが関係なくずっと関わってくれたから、今もずっと友だちでいてくれてありがとうと言う。
だけど、ある時私はふと落ちる時があって、小さい頃の見捨てられ不安みたいなのがぶり返して、見捨てられる前に切ろうみたいなのが働く。
誰かを大事に思うほど、自分を大事にしてこなかった。
おまえは捨てられて当然の人間なんだと、私の中の小さな子どもはずっと思ってきたのだ。
だから、私の言動が、誰かにとって大きな影響を与えていたり、大事な存在だと言われれば戸惑う。
母親からそこまで必要とされてなかった玩具のような私が、誰かにとってかけがえのない存在であっていいのかなと。
菊ちゃんのことは大好きだった。
でも、自分が必要とされてるとは思ってなかった。
いつもいつもしつこくつきまとっていたのは私なのだから。
そうして菊ちゃんとの空白の時間ができた。
再び繋がる
2024年9月11日。
私と菊ちゃんが一緒の時間を過ごした某有名パン工場に今も勤める兄弟分から菊ちゃんが余命二ヶ月ということ聞いた。
当時一緒にパートで働いていた奥さんが、私と菊ちゃんが仲良かったから私に教えてやってと兄弟分に頼んだらしい。
その奥さんにくわしく聞きたいからLINE教えてくれと頼んだ。
だけど、菊ちゃんはやはりLINEを使っていない。
兄弟分は菊ちゃんの旦那さんであるKさんの職場仲間に連絡をとってくれるという。その奥さんもかつて同じパートだった子で、菊ちゃんと繋がれるというのだ。この子はまっきーという。
9月24日
まっきーから連絡がきて、菊ちゃんのLINEを手に入れる。
まっきーによると、もうこの時の菊ちゃんは脳にも転移していて記憶が時々飛ぶとのこと。
そしてKさんが私の名前をあげて、菊ちゃんに私と連絡とらせてあげたいと言ったと聞いた。
まっきーから菊ちゃんにそれを言うと、もう身体も悪いし、そこだけ伝えてもらって、それでもいいならいいよという返事だったという。
だけど追加でその後、私からの連絡を楽しみに待ってるとマッキーにメッセージがきたらしい。
その日、私はすぐに菊ちゃんにLINEをする。
一番直近の写真と一緒に文字メッセージとボイスメッセージ。
返事はすぐにきた。
ある日突然いつもの癖で、私が連絡しなくても別に誰も気にしないよなスイッチが作動し、菊ちゃんにも連絡をしなくなったのは私なのに、そのことを詫びると菊ちゃんが「ごめんね」と言う。
絵文字なんて使いそうもないキャラだったのに、私に笑顔を向けてくれる。それだけで、昔の恋心が蘇るような感覚になり、菊ちゃんを追いかけまわしていた時の自分のノリに一瞬で戻った。
それからの私はほとんど毎日菊ちゃんにLINEを送り続けた。
菊ちゃんが見たこともないもの見せたくて、中国の日常風景の動画や写真をよく送った。
自分の授業の様子とか、そのうち動画編集までするようになった。
菊ちゃんは猫のスタンプをよく使ってきたし、猫が好きなんだろう。本人も白い毛並みのクールな猫って感じの女の子だった。
だから大学の野良猫の写真や動画もよく送った。
余命二ヶ月と言われてから二か月が過ぎ11月になっていた。
菊ちゃんが食事ができているのかもわからないから、食べ物の写真などはなるべく避けていたけれど、私の日常の切り抜きとして、この頃の私が一人で外で焼き芋を食べていることなどを報告していた。
菊ちゃんが既読になるまでの時間が一日から三日、数日とだんだんのびていく。
それでも私は毎日メッセージを送り続け、既読がつくたび喜んだ。
これが本来のLINEの機能なんだろう。
私は本来既読無視が大嫌いな人間で、それこそ無視されると蔑ろスイッチが入るので、既読無視=自分に関心がない=連絡しなくなるのコンボが発生するめんどくさい人間だ。
だけど、本来既読機能は安否確認のためのものだ。
だから、既読になっただけで、菊ちゃんの命がまだ私とつながっていると思って、本当にうれしかった。
だけど、それでも既読の後は数日に一度は来ていた返事もだんだんできなくなっていたんだろう。
最後の返事は12月9日だった。
菊ちゃんはいつも私の怪我の心配や子どものこと、さらには他人にかける迷惑まで考える人だった。
自分の体のつらさのことは一切言わなかった。
詳しい病状は知らなかった。
私も聞かなかった。
というのも、私は何人か親しい人の最期に接したりしているが、病気になったことで日常から切り離されたり気を遣われたり腫物みたく扱われることを望んでる人はいなかった。
死を迎えようとしている人を日常から隔離するような接し方はしたくないという考えが私にはある。
だから、菊ちゃんが普通に接してくるなら、私もそうしようと思った。
私たちはたぶんお互い嬉しかった。
空白の時間を埋めるように、繋がりを喜ぶように、たわいもないおしゃべりで、相手の存在を感じ取れるだけでよかったのだ。
そうして、クリスマスの報告、大晦日、そして元旦の挨拶……ここまでは既読がついていた。
年を越せるまではもたないとされていた菊ちゃんがここまで生きてくれている。一時は余命宣告なんてうそじゃないかと思っていたが、元旦を最後に一週間、既読がまったくつかなくなる。
そして一月七日、私は大学の野良猫に突然噛まれる。
それまでなついてすり寄っていた野良猫が急に私に二度も噛みついてきた。
さらにその帰り、電動バイクのタイヤがいきなりパンクする。
なんだか嫌な予感がした。
さすがに心配になり、私はまっきーに連絡した。
そして菊ちゃんが入院していたことを聞いた。
大腿骨骨折で入院したらしい。
もう身体が相当弱っていて、自分で自分の体を支えられなくなっていたそうだ。
人づてに聞いた話。
もう何もかも弱っていて退院は難しいだろうということだった。
最後の余命を自宅療養で家族と過ごしていた菊ちゃんは、もう家には戻れなくなった。
それでも私はLINEを送り続けた。
このメッセージが既読になったのは、菊ちゃんが見たからではない。
菊ちゃんの最期
私のメッセージが既読になったのは、菊ちゃんの旦那さんであるKさんがLINEを見たからだろう。
返信をくれたのはKさんだった。
「かなりヤバイ」
というものだった。
私はこの時初めて菊ちゃんの命が消えかかっているということを知った。
さらに初めて菊ちゃんが癌だったことを知る。
一度は消えた癌が去年の2月に再発したのだという。
そして9月に余命宣告されて、医師には七日にはもうそろそろと言われたところだった。
Kさんは、余命二ヶ月から倍生きてくれたからありがとうしかないと言う。
そして昨日、1月14日。
日本時間17時52分。
Kさんが「喋れないけど耳は聞こえてるから、しゃべりかけてみるかい?」と私に聞く。
でも残念なことにLINE電話は繋がらない。
中国だとLINE自体本来は禁止で難しいのだ。
私はボイスメッセージを録音することにした。
そしてこの時知ったこと。
菊ちゃんの携帯の電話帳に私の名字が結婚していた時の名字で登録されていた。
結婚したのが2013年。その時はまだ年賀状ぐらいのやりとりはあっただろうか。電話もしたことがあった。
2016年から中国に行き、帰国しても特に連絡はしていなかった。
それでも、菊ちゃんは私からの連絡を待っていたのだろうか。
私の携帯は新しくなり、電話番号も変わっていた。
古いものは父が受け継いでいた。
それでも菊ちゃんは私の連絡を待っていたのだろうか。
私は何を録音しようかと思ったけど、結局録音したのは、最初に菊ちゃんに送ったボイスメッセージと同じような内容。頭ぽんぽん事件。
「この前、猫にかまれたんだよ。そしてその日にバイクがパンクしたんだよ。それで、菊ちゃん既読にならないと思って気になって、まっきーに連絡して旦那さんからLINEもらって、久しぶりにKさんともつながって、なんかなつかしいね。あれから20年ぐらいたってるのかな。
私のおかげで二人は結婚したと今でも思っていて、Kさんが菊ちゃんに頭ぽんぽんってやったら、菊ちゃんが真っ赤になったことあったよね、LINEにも書いたかもだけど、あれ、私もKさんにやられたけど、私は別に・・・なんとも・・・笑
でもやっぱり菊ちゃんは真っ赤になったから、あれが頭ぽんぽんスイッチっていうか、菊ちゃんが恋に落ちた瞬間・・・いやちがうな、その前からなのかな。まあ今じゃもうわからないけどね。
そして二人は結婚して、お子さんを授かり、なんかあれだね、二人の子どもが存在してるのは、私のおかげかなってちょっと思う時が・・・うーん、ごめんなさい笑 二人の縁だね。その二人の縁にちょっと私も関わって、恋のキューピッド・・・いや、もともと縁があったからね、二人は結婚することになったんだと思う。
菊ちゃんと結婚できてKさんが超羨ましい~って本当にあの頃からずっと思ってて、うん、今も好きです!菊ちゃん!
ちょっと、どさくさまぎれに告白・・・大好きだ―!」
だらだらといつもの無駄話口調で菊ちゃんは聞きやすくないかもしれない。
そう思って私は言いたいことを濃縮してさらに録音した。
私が最後に録音した10秒の言葉、それは
「菊ちゃーん! 好きだ! 大好きだ―!
中国から愛を込めて。好きだぁ!!!!」
そしてその直後、Kさんから返信。
「今亡くなったよ」
2024年1月14日日本時間18時14分。
私の声を聞きながらだったという。
Kさんも私の声が聞けてよかったと。
子どもたち二人はメンタルが弱い繊細な子たちということもあり、菊ちゃんにたった一人で付き添い、看取ったKさん。
私はその場にいなかったけど、LINEのやりとりをしながら、声をかけながら、Kさんと一緒に菊ちゃんを看取った。
三人で同じ場所で働いて、どっちも私の好きな人たちで、二人と一緒に過ごした時間は二度と戻らず、今、この時、幕が下りた。
菊ちゃんのスマホは解約せず、そのまま娘さんに持たすとKさんは言う。
だから時々連絡とろうと。
菊ちゃんに似ているという娘さん。
反抗期で手を焼いていると菊ちゃんは言っていた。
言葉も一言しか返ってこないと。
でも、ますます私が出会った頃の菊ちゃんに似ているじゃないか。
もう一度、私は菊ちゃんに出会えるだろうか。
菊ちゃんに送り続けた愛を今度は娘に送り続ける。
追いかけて追いかけてしつこいぐらいに話かけて、最初はそっけなかった菊ちゃんが、すたすた先を歩いて私を置いて行ってしまう菊ちゃんが、だんだん私に歩調を合わせて、待ってくれるようになって、気づいたら隣にいて、そして笑ってくれるようになった。
娘さんが笑ってくれるかはわからないし、心開くかも知らんけど、それでも私は関心があるということは示したい。
ブロックされない程度には気にかけていたいと思っている。
いつか、お父さんとお母さんのことを話したい。
不器用でぶっきらぼうでそっけない二人が実は本当はすごく優しくて魅力的だったんだということを。
それを私はそれぞれにいつも話していたから、二人がお互い関心を持って惹かれ合ったんだと。
その夜、Kさんから連絡を受けたまっきー夫妻は、Kさんのところにかけつけたという。
死んだ直後に看護師さんがすぐ化粧をして口角をあげてくれたから笑った顔なんだとKさんは言ったというが、まっきーはそうじゃないと思うと言う。
口角上げても下がる人はいるし、菊ちゃんは大好きなKさんと私の声に包まれて旅立ったから下がらなかったんだと。
もしも本当に菊ちゃんが、私の声を聞いて、笑ってくれたなら、良かったと思う。
出会った頃の菊ちゃんは笑うことがほとんどなかった。
だけど、最後は微笑んで、笑った顔だったんだ。
私が大好きだった女の子は強くて優しくて最後まで綺麗だった。
好きで好きで追いかけ回した菊ちゃんが笑ってくれるようになるまでしつこかったな。
嫌われてると思ったこともあったけど笑ってくれるまでしつこかったな。
そして最後も笑ってくれた。笑わせられてよかった。
私はもっと自分が大事に想われていることを受け入れなきゃダメだな。
私の理解者である友人も私に言う。
私は本当にたくさんの誰かにとって大切な存在なのだと。
私は菊ちゃんが最後まで愛情を受け取ってくれたことを忘れない。
最後まで私に笑ってくれたことも忘れない。
自分が大切だと思う人に大切に思われていたことを記憶する。
ありあまる愛情を自分自身にも向けられるように。
「菊ちゃんの名前は夕暮れの香りの里だね、素敵だね」
そう言って名前を褒めたことを、私は思い出した。