やどかりハウスとは~街に生まれた雨風しのぐ宿~
とある街に生まれた雨風しのぐ宿「やどかりハウス」についてご紹介します。
やどかりハウスとは?
やどかりハウスは、長野県上田市にある劇場やゲストハウスを運営する「犀の角」と生活相談と伴走支援を行っているNPO「場作りネット」が2020年12月からはじめた取り組みで、犀の角のゲストハウスに1泊500円(現在1,000で試行中)で泊まることができます。年齢・性別問わず誰でも困った時に訪れ、あるいは困りごとがなくても息抜きとして利用できる、そんな雨風しのげる場です。めんどうな手続きはなく、宿泊に関する連絡はやどかりハウス公式ラインで行うことができます。
やどかりハウスは連泊は3泊までとなっており、中長期での駆け込み場を必要としている人には、シェアハウスやマンスリーマンションや居候バンクなどをご紹介しています。
やどかりハウスへの宿泊は、取り組み開始から2年間で1,000泊を超え、何らかの伴走支援に繋がった人は約200名に上りました。深刻な困り事を抱えていても支援を受けられず孤立してしまう人が多い現実に直面する中で、やどかりハウスは「誰でも」まずは受け入れ、問題があればその都度みんなで考えることを大事にしてきました。やどかりハウスの日々の様子は、Instagramでも発信していますのでチェックしてみてください。
やどかりハウスを利用する
やどかりハウスを利用する際の流れについてご紹介します。
やどかりハウス公式ラインにアクセス
予約フォームから申込み
担当者から連絡がくる
やどかりハウスへ向かう
スタッフから説明を受けたのちお部屋へご案内
やどかりハウスに関する連絡は、基本的に公式ラインでおこなっています。宿泊予約だけでなく相談やイベントのお知らせもラインでおこなっていますので、まずは友達登録をしてみてください。
食事について
基本的に食事は無しの素泊まりになります。ただし、常時寄付などで集まった食材がある(食べ尽くされているタイミングもあるかもですが)ので、それを使って自炊をすることができます。自炊が難しい場合は、やどかりスタッフと一緒に作ることもできるのでご相談ください。
アメニティについて
シャンプー、コンディショナー、ボディーソープは備え付けのものがあります。バスタオル、歯ブラシといったアメニティグッズや、洗濯機の利用は別途料金がかかります。
過ごし方について
やどかりハウスでの過ごし方に決まったものはありません。部屋で静かに過ごすもよし、街に出かけるもよし、犀の角に集う人たちと交流するもよし。思い思いに過ごすことができます。
やどかりハウスに相談する
やどかりハウスのスタッフに、困りごとの相談をすることもできます。予約をする際にやりとりする公式ラインや電話でも相談可能ですが「やどかりハウスに来て一緒に考える」ということを大切にしています。まずはぜひお越しください。見学もOKです。
やどかりハウスと街
やどかりハウスの大きな特徴は街の中にあるということです。拠点にしている犀の角は街中の劇場兼ゲストハウスであり、普段から街と旅人の交流点になっています。また劇場では演劇をはじめ様々な表現活動やイベントなども行われており、何かが生まれる隙間を持っている場所でもあります。
そこに困り事を抱えた人がふらっと逃げ込める場が出来たことで、また新たな取り組みや「場」が次々と生まれています。以下にご紹介します。
のきした
”のきした”はコロナ禍に始まった集まりです。コロナの混乱期に劇場や映画館やNPOに関わる人など、いろんな人が立場を超えて集まり、自粛を迫られたステージ上で話を始めたのがきっかけです。日本家屋が雨風から建物を守るために屋根を長く作りそれが「軒(のき)」となり、軒下に縁側が生まれたエピソードにインスパイヤされ、この社会に雨風しのぐ「のき」を作っていこうではないかと、そこで生まれる活動を「のきした」と呼び「今こそ必要だ」と思うことや「面白い」と思うことを、ワイワイがやがや楽しくやってきました。
やどかりハウスもその一環の中で生まれた取り組みです。代表者がいるわけでもなく、その時々集まった人達が「首脳」となり、思いつくまま活動してきました。
”集まれないなら開く”をテーマに焼き芋を街中に配り歩くパレードをやったり、寄付の食材でみんなで作って無料で食べるイベントをやってみたり、年末年始の5日間鍋を煮続けたり、駅伝をしてみたり、子ども達の部活動を街中に作ってみたり、お金ではなく時間を通貨にしてみたり、様々なことをやってきました。
現在、その熱は日常に溶け込みながら、毎月13日に「のきしたむすびの日」という名前で、無料で食べる食事会を続けています。のきしたむすびの日の様子はマガジンにて投稿していますのでご一読ください。
また、そうしたのきしたに関わる人たちの言葉を集めた「のきしたjournal」を発行してます。まだまだ言葉にならない私たちの活動を少しずつ言葉にしていきたいと思っています。映画館や劇場で手に取れますのでぜひ手に取ってみてください。(のきしたのFacebookもあります!)
のきした仕事事業
やどかりハウスでは上田の街中や周辺地域で仕事体験ができる「のきした仕事事業」を行っています。はじまったきっかけは、やどかりハウスを必要としていた若者の多くが経済的な自立を阻まれていたことでした。できる仕事自体が限られている社会状況の中で、いろんな事情を抱えこみ社会参加の機会が奪われていました。
そこでやどかりハウスに共感してくれる人達の協力を得て、有償ボランティアという形でお金も貰え、仕事体験やお手伝いをして、街の繋がりを増やしたり、社会参加や経済的自立のきっかけを得ることを目的として始めました。これまで以下の仕事をさせてもらいました。仕事をさせてもらえる場所は随時募集しています。
現在(2023年10月現在)は以下の場所で仕事体験を行っています。
コトバヤ(柳町の古本屋さん)
バリューブックスラボ(街中の古本屋さん)
上田映劇(街中の100年続く映画館)
犀の角(劇場とゲストハウスのお仕事)
屯ーtonー(NPO法人リベルテが運営する小さな食堂)
たてしなブルーベリーファーム(自然の中の素敵なブルーベリー農園のお仕事)
HIGHLAND REMEDIES(ハーブ園でのお仕事です)
やどかりシネマクラブ
また犀の角から徒歩3分のところにある映画館・上田映劇と協働で「やどかりシネマクラブ」を実施。家族やジェンダー、子育て、暴力、対話や旅など女性や若者にかかわるテーマの作品を「やどかり選定映画」とし、映画を鑑賞できる招待券ををお渡ししたり、作品を通して感じたことを語る対話の場をひらいています。対話の場はやどかりハウスの利用者だけでなく、地域の方も参加できるので、ぜひ訪れてみてください。対話会の日程は、公式ラインやnoteにてお知らせしています。
これまでに選定した映画たち
「658km 陽子の旅」
「遠いところ」
「トゥ・レスリー」
「星くずの片隅で」
「70歳のチア・リーダー」
「同じ下着を着るふたりの女」
「炎上する君」
「セールスガールズの考現学」
「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」
「共に生きる」
「青いカフタンの仕立て屋」
「サントメール ある被告」
「シモーヌ」
なぜやどかりハウスをやっているのか
やどかりハウスは毎年、寄付金や補助金、食材の寄付や職場の提供など様々な方々にいろんな形でご協力を頂きながら運営しています。2年間で1000泊の利用があり、今現在も毎日のように誰かが駆け込んでくる場所になりました。
なぜこのようなことをやっているのか、明確な答えは見つかっていませんが、辞めたくはないと思っています。本当に大変な状況を長く生きていた人たちが、こんなにも隠れていたのかと驚きます。毎日毎日そういう人たちと出会えることが、なぜかうれしいと感じている気がします(大変でめんどくさいこともありますが笑)
私たちの生活は沢山の暴力的支配が隠されながら運営されていて、それに日々加担して生きていたのだと分かります。
それを超えて、私たちが私たちの生を思う存分生きれる道があるようにも感じています。
これからも、出会う人達と一緒に探して行ければと思っています。
やどかりハウスを応援する
やどかりハウスは、この取り組みを応援してくださる方を随時募集しています。食材のご寄付をはじめ、調理器具などもありがたいですし、お金も必要です(宿代や支援スタッフの人件費です)お力をお貸しいただける方は、やどかりハウス公式ラインよりご連絡ください。ぜひお会いしてお話させてもらえれば、そして一緒にやどかりハウスを動かしていければと思っています!
また「Syncable(シンカブル)」を通したご寄付も500円から承っています。こちらも合わせてチェックしていただければ嬉しいです。
新型コロナ及び原油価格・物価高騰対応支援助成2022
「街を社会的インフラにするための場作り事業」