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アキくんの卒業に寄せて -initial step in NIJISANJI-

※2024/9/1に書いたこちらのツイートです。

1期生のライブに行ったことがある。

当時私はにじさんじにハマりたてで、勇気ちひろをほんのり推していた。
陰のオタクだったからライブに行くのなんてほぼ初めてなのに、動く彼女たちを生で観たくて、物珍しいものを見る気持ちでチケットを取った。

事前通販があることも、当日の物販についても全く分からなかった。結局買うつもり満々だったペンライトも買えず、よく分からないまま席に着いたのを覚えている。

隣の席に座っていたのは、見るからにずっとアキくんを推しているであろう女の子だった。黄色いリボンを頭に着けていたような気がする。

当時アキくんは、1期生の中で唯一3Dの体を持っていなかった。あのライブは、アキくんの3Dお披露目でもあった。

そんな彼によるアナウンスが流れ、音楽が鳴り止んだ。観客全員が息を飲むような緊張感に包まれていた。

始まる直前、1期生が肉声で円陣を組んで叫ぶ。

「もう始まるんだ、そこに彼女達がいるんだ」という高揚感は未だに忘れられない。

オープニング映像が流れる。
全員の初配信での1言目、本当の「initial step」と共に、彼女たちの名前が順番に映し出された。
にじさんじにわかだった私でも「この人たちがにじさんじを作り上げ、支えてきたんだな」と熱い気持ちになる映像だった。

カウントダウンが始まった。会場の熱気はほぼ頂点に達していた。

そして、1曲目「Mr. Music」。

動く8人の姿がステージに移された瞬間
隣のアキくん推しの彼女がワッと大号泣したのを感じた。

2021年はコロナ禍真っ只中で、歓声NGのライブだった。必死に泣き声を抑えながら、それでもアキくんを目に焼き付けようとしていた。
文脈を知らない私ですらアキくんに目を奪われていた。

決して大きくはない体で、ニコニコといつもの笑顔を浮かべながら歌っている彼の姿。
「アキくん3Dおめでとう」と7人が彼を祝った頃には、私の視界もにじんでいた。

隣の彼女は、1曲目の後のMCが終わる頃までずっと泣き声を抑えながらアキくんを真っ直ぐ見つめていた。


昨日 8月31日、アキくんはにじさんじを卒業した。

とても優しい配信をする彼だから、リスナーも優しい人が多かったように思う。

にじさんじにアキくんが居なくなってしまった今、隣にいた彼女はどうしているのだろうか。
まだ泣いているかもしれない。前を向いているかもしれない。もしかしたら、もうにじさんじを観ていないかもしれない。

でも、あの日の彼女が全身全霊でアキくんを応援していたこと、彼の6年半の軌跡がアキネコさんたちを支えていたこと。間違いなく、アキくんは沢山のリスナーを救っていたはずだ。

たまに配信を見る程度の私が知ったような口を叩くなと思われるかもしれないけれど、アキくんの配信には、彼にしかない癒しがあった。

Vtuberのファンは誰しも、いつか来てしまう「推しの卒業」という不安を抱えながら推し続けていると思う。
ライバー自身にも人生がある。ライバーをしている期間は履歴書の空白であり、結婚、出産、子育てなどライフイベントもあるだろう。

ライバーたちが「卒業」を考える時、彼らはきっと「彼らの人生」の分岐点に立っているのだと思う。悩まずに卒業を決めるライバーなんて、きっといない。

それなら、私はライバーたちの門出を祝うことしか出来ない。

8月31日、夏の終わりとともにアキくんはにじさんじから去ってしまったけれどリスナーたちの心の中に、人生に、彼の6年半はきっと残り続けるんだと思う。

アキくん、卒業おめでとう。
にじさんじにいてくれてありがとう。

アキくんの人生が、素敵な道のりでありますように。
「にじさんじの鈴谷アキ」から卒業して「initial step」を踏んだ今日、貴方が笑っていますように。

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