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#592 思い出しちゃう男
「いよいよ来週に迫った世界ミドル級王座統一戦。本日はスタジオに、日本の玉田選手と対戦するフィリピンの精密機械こと、ハメス・カスティーヨ選手に来ていただいております。」
キャスターの男は、視線を目の前のカメラからカスティーヨに移した。
「カスティーヨ選手、間もなく大一番が迫っています。今の心境を教えていただけますか?」
カスティーヨが話し始めると、通訳の男が同時に言葉を翻訳する。
「今はとてもワクワクしているよ。しかもこの日本という素晴らしい国で、ビッグマッチを戦うことができるなんて最高だよ。」
「現在、コンディションの方はいかがですか?」
「日本の素晴らしい環境のおかげで、エネルギーに満ちているよ。本当に日本は素晴らしい国だね。食事も最高だ。今は減量中でほとんど食べれないが、試合が終わったら日本の美味しいご飯を堪能したいね。」
「日本に訪れるのは、今回が初めてですか?」
「来るのは初めてだけど、実は僕の兄の妻が日本の方でね。だから日本には元から縁があるんだ。日本の食事も大好きだよ。兄嫁が何度か日本のご飯を作ってくれて、それがどれも最高に美味しいんだ。中でもカツカレーだね。うどんや寿司もいいけど、カツカレーには勝てないよ。あれは最高さ。本当にアメイジングだよ。兄嫁の作るカツカレーは本当に最高なんだ。思い出しただけで食べたくなるよ、最高さ。」
「話をボクシングに戻します。あなたは玉田選手のスタイルを良く研究していると思います。彼をストップする自信はありますか?」
「タマダの試合の映像はたくさん見たよ。彼はカツカレーのような選手だね。」
「は?」
「素晴らしいという意味さ。タマダもカツカレーも本当に素晴らしいよ。でも僕の中では正直カツカレーの方が上かな?タマダも素晴らしいけどね。兄嫁が作るカツカレーには敵わないよ。本当に最高なんだ。」
「なるほど。あなたはタマダ選手をどう分析してらっしゃいますか?」
「ああ、思い出したらヨダレが出てきたよ。」
「え?」
「兄嫁が作るカツカレーほど美味しい料理は他に見当たらないよ。隠し味が聞いているんだ。えっと・・何だっけな?何が入っているんだっけ?ごめん、思い出せないや。」
「あ、大丈夫です。それよりタマダ選手をどう分析していますか?」
「パンチのコンビネーションが素晴らしいという印象を受けているよ。まるでカレーとカツのようだ。」
「またカツカレーですか!?」
「本当に素晴らしいね。でも僕の中では正直カレーとカツの方が上かな。タマダのコンビネーションパンチも素晴らしいけどね。兄嫁が作るカツカレーには敵わないよ。」
「兄嫁のカツカレーが美味しいのはもうわかったので・・・」
「一度兄嫁のベストフレンドにも作ってもらったことがあるんだが、そっちは少し違ったね。もちろん美味しいんだけどさ、兄嫁のカツカレーには敵わないよ。ダメだ、減量中にこんな話するもんじゃないね。正気を失いそうだよ。早くカツカレーが食べたいね。」
「もうカツカレーはわかったので。ボクシングの話をよろしいですか?」
「チョコレートだ!」
「何がですか!?」
「隠し味だよ!カツカレーの隠し味にチョコレートが入っているんだ!チョコレートが入るとルーの味が上品になるんだ。本当に最高さ。」
「すみません。日本のファンは、あなたのボクシングの話を待っています。カツカレーの話はもうよろしいですか?」
「ああ、すまなかった。実は今減量中でほとんど何も口にしていないんだ。それで・・・つい。」
「そうでしたか。」
「本当にしんどくて・・・すまない・・。もう辞めたい・・・。」
「は!?」
「なんで毎回試合前にこんな辛い思いをしないといけないんだ!!」
「急にどうされました!?」
「辛いんだよ!今回の減量は特にね!なぜならカツカレーを食べすぎてしまったから!体重が増えすぎてしまったんだ!カツカレーは罪だよ!何であんなに美味しいんだ!ああ、早くカツカレーが食べたい!」
「すみません、ボクシングの話を・・」
「ボクシングなんてどうでもいいよ!どうせ試合なんてどうせ勝てるから!」
「えぇ!?」
「そんなことよりカツカレーだよ!ああああ!カツカレーを早く食べさせてくれ!」
「やっぱりチャンピオンはネジがぶっ飛んでるな・・。」