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#648 手応え感じた男
「後ろこんな感じになってます。」
美容師の男は鏡を見せた。
「はい。ありがとうございます。」
「いやー、すごいいい感じです!」
「ですよね!すごいイメージしてた通りの感じです!」
「え、ですよねえ!やっぱりそうですよね!お客様的にもすごいいい感じですよね?」
「はい、いい感じです。」
「ですよねえ。いや普通ね、こんな綺麗にパーマかからないですよ。」
「そうですか!」
「うわあ、傑作だ!」
「はい?」
「お客様、僕の美容師人生の中で一番の傑作です!」
「あっ、えっと………ありがとうございます。」
「うわあ、やばいなあ。すげえ。え、お客様今回当店利用されるの初めてじゃないですか!どうですか?他の店でもここまでイメージ通りになりました?」
「いや、今回が一番かも知れないです。」
「うわあ。やっぱ傑作だ。泣きそう。やばい。」
「あれ?もう終わったんですよね?これなんの時間ですか?」
「いやそのー、一回そばでひたらせてください。」
「え、なんですかその時間。」
「うわあ、すげえ。ちょっとちゃんと見ていいですか?」
美容師は客をマジマジと見つめた。
「ちょっと、僕のこと絵画みたいに見つめるのやめてもらっていいですか?」
「うわあ、やっぱり最高傑作だ。」
「さっきから作品みたいな扱いされるのあんま気分良くないですけど!」
「あの!お兄さんのこと今後の僕の心の拠り所にしてもいいですか?」
「それはまあ別にいいですけど。」
「え、ちょっと写真撮っていいですか?僕のカメラで!」
「いや、やめてください!」
「お願いします!写真撮って部屋に飾りたいんで!」
「恥ずかしいです!やめてください!」
「ちなみに、お客様的にはどの辺が気に入ってます?」
「え?」
「どの辺がどんな感じで気に入ってるかなーって!」
「ちょっともう帰りたいんですけど!」
「どこですか?」
「いや、この刈り上げの感じとかですかねえ!」
「あぁ…あ、なるほど。あ、そっちか。」
「あ、なんか違ったんですか?」
「僕はもうこのパーマのかかり具合。これがもう……あー、やばい!お客様来週の土曜日とかって空いてます?」
「なんで?」
「お客様のことを披露する宴をやりたいなーって。」
「なにそれ!行きませんよ!」
「今までお世話になった人たち呼んで、お客様のこと見せたいんです!」
「絶対にやめてください!」
「うわ、どうしよ!あー、もう決めた!俺もう辞めます!」
「は?」
「今日美容師辞めます!」
「なんで!?」
「もう多分今後続けても、これ以上出ないと思うんで!」
「なにその決断!」
「もうハサミは置きます!今後はあなたの家の近くのコンビニとかで働きます!」
「こいつやばいわ。」