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#272 素敵なプレゼントをする男
ミキが働いているお花屋さんに、1人の男性客がやってきた。
「あのー、花束を作っていただきたいんですけど。」
男は緊張気味に、ミキに話しかけた。
「花束ですね?かしこまりました。ではお作りいたしますので、用途を教えていただいてもよろしいですか?」
ミキが尋ねると、男は恥ずかしそうに答えた。
「えっと、実は今好きな子がいて。もう少しで付き合えそうなんです。その子に花束をプレゼントしたいなって。」
「あー、それは素敵ですね!」
「喜んでもらえたら嬉しいんですけど。」
「きっと喜んでもらえますよ!では心を込めて素敵な花束作らせていただきますね!ちなみにご予算はどれくらいですか?」
「んー、3000円くらいで。」
「かしこまりました!ちなみに贈る方って20代ですか?」
「はい。今年27歳です。」
「なるほど。その方のイメージとかってあります?」
「うーん、イメージですか?なんていうか・・女の子っぽい感じですかね。私服でよく可愛らしいワンピースとか着てますね。」
「なるほど!」
「あ、あと。その子の部屋が白を基調としてるんで、そういう部屋に合う感じっていうんですかね〜・・・」
「あ、そうなんですね!じゃあカラフルな感じよりもナチュラルな感じでお作りいたしますね?少々お待ち下さい!」
ミキは男からのイメージを元に花束を作り始めた。
「こちらのお花なんかどうですかね?リナリアというお花なんですけど、花言葉が【この恋に気づいて】なんです。」
「あー、いいですね!じゃあそれ入れてください!」
「はい。で、あとはこの辺のお花をこうして・・・はい!こんな感じでどうですかね?」
ミキはナチュラルカラーをメインにした綺麗な花束をこしらえた。
「うわー、素敵ですね!」
男は満足そうな表情を浮かべた。
「こちらでよろしいですか?」
「はい!」
「では、お会計が3000円になります。メッセージカード無料で添えることできますが、いかがいたしますか?」
「あ、じゃあお願いします!」
男はそう言って、差し出されたメッセージカードに【また一緒に映画見ようね】と書いてミキに渡した。
「お相手の女性の方、きっと喜ばれると思いますよ!」
「ホントですか?ありがとうございます!あ、これピッタリ3000円です!」
「はい、お預かりいたします!ではこちら花束です!」
ミキは男に花束を渡した。
「素敵な花束を作っていただいてありがとうございます!」
「とんでもございません!本日はありがとうございました!」
ミキは深々と頭を下げた。すると男はミキに笑顔で言った。
「じゃあ、よかったらこの花束受け取ってください!」
男はミキに花束を差し出した。
「え?・・・・私?」
「はい。あなたの為に作った花束です。」
男は笑顔を浮かべた。
「ぎゃあああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
ミキは悲鳴を上げた。
「なにこの人!!!!!!怖い!!!!!」
「受け取ってもらえませんか?」
「なんで!?なんで私の部屋の色とか私服のこと知ってるんですか!!!!!!!もしかして・・・ストーカー?」
「いやストーカーなんてそんな。」
「え、ストーカーって昼間にこんなにハッキリ見えるものなの!?ぎゃあああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
「大丈夫ですか?」
「触らないでえええええええ!!!!!!もう少しで付き合えそうだと思ってるの含めて全部怖い!!!!!!!ぎゃあああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
ミキは店の電話に手をかけた。
「警察呼びますよ?」
男は残念そうな顔をした。
「そうか。受け取ってもらえないか。今日は帰るよ。」
「え?」
「今度また一緒に映画見ようね。」
「映画?」
「昨日の夜、君の部屋で見たじゃん。」
「・・・・・・・ぎゃあああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」