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#571 母校にやって来た男

ノグチが学校の裏口でタバコに火を付けると、男に声をかけられた。

「ノグチ先生!」

声の方に視線を向けると、色の薄いサングラスをかけた、少しヤンチャそうな男が立っていた。

「うわー、やっぱりそうだ!ウケる!ノグッチだ!」

「おお・・。」

「お久しぶりです!」

「おー・・久しぶり!」

「ノグチ先生、ずっとこの学校いるじゃないですか!ウケる!」

「ああ・・。」

「いやー、嬉しい!ちょっと仕事でたまたま近く通りかかったんで、寄ってみたんですけど!まさかノグチ先生に会えるとはなあ!」

「ああ、そうか。えー・・元気か?」

「もちろんっすよ!先生は元気っすか?」

「ああ、まあな・・。」

「俺も一緒にタバコ吸っていいすか?」

「お、おう・・。」

「マジウケるなー!ノグチ先生とタバコ吸ってる!エモ!」

「はは・・。」

「ちょっとノグチ先生なんすか、その感じ!まさか俺のこと覚えてないんすか?」

「ごめん・・。」

「え?」

「ちょっと、ごめんなあ・・。あのー・・誰だっけか?」

「え、マジすか?」

「ごめんな・・。」

「いや、オオタっすよ!オオタ!4年前に、先生のクラスにいた!」

「・・オオタ?」

「オオタアツヤっす!」

「・・・おぉん?」

「えぇ・・。」

「いや、あのー・・君みたいにヤンチャなタイプの卒業生って普通忘れないんだけどな。本当にウチのクラスいたか?」

「いましたよ!オゼキとか覚えてないですか?」

「オゼキって、オゼキユウスケか?」

「そうですよ!」

「おお、覚えてるよ!」

「あとはホリキタとか!」

「おお、ホリキタな!」

「そいつらと同じクラスで!いたでしょ、ね?」

「・・・嘘だぁ?」

「いやいやいや!嘘つくわけないでしょ!」

「もしかして、あれか?高校時代はもっと真面目な感じか?」

「いや、高校時代からこんな感じっすよ!」

「あ、そう?」

「あ、きっとサングラスだ!サングラスかけてるからわからないんだ!」

「あ、そうかもな!ちょっと外してくれるか?」

「はい。」

オオタはサングラスを外した。

「・・・誰だ君は!?」

「えぇ・・。」

「ダメだ、全然わからん!なんなんだ君は!」

「なんなんだ君はって・・。」

「なんか、エピソードとかないのか?私とのエピソード!」

「エピソードですか?んー・・・あ、そうだ!」

「なんだ?」

「修学旅行の時に、俺が木刀を買ったの覚えてないですか?」

「いやー・・・」

「買ったじゃないですか!木刀!で、そしたら邪魔になるからって、修学旅行終わるまで、先生が俺の木刀没収したじゃないっすか!」

「弱いなあ!」

「弱い!?」

「木刀買うやつって今まで何人もいたから!ただ、言わせてもらう!木刀買うようなキャラの卒業生で、覚えてないのは君が初めて!」

「なんで!?」

「私もなんで!?ってなってる!逆にすごいよ、君!そのキャラで忘れられるって!普通いない!すごい!」

「褒められても嬉しくないっすよ!」

「ただ、もう絶対に忘れない!オオタくんだね?今日、覚えました!」

「いや、おかしいだろ!」

するとそこに、体育教師のマツダがやって来た。

「おやおや、ノグチ先生。教え子ですか?」

「・・・みたいです。」

「みたいです?」

マツダは戸惑いながら、オオタに会釈をした。

「マツダ先生っすよね?」

「ん?」

「先生に体育教わってました!オオタです!」

「・・・オオタ?」

「オオタアツヤっす!」

「・・・おぉん!?」

「もうなんなんだよ、この学校!」

「ノグチ先生、覚えてますか?」

マツダはノグチに尋ねた。

「それが僕も〜・・・」

「普通こういうヤンチャなタイプの生徒って忘れないもんですけどねえ・・。」

「ですよねえ。」

「オオタくん、って言ったか?」

マツダはオオタに話しかけた。

「君、よく来れたね?」

「なんちゅうこと言うんだよ!」

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