史実に沿った描写をする時ChatGPTは便利!
画像生成で綺麗な絵を出して繋ぎ合わせればすごい漫画ができる、と思う方ももしかしたらいるのかもしれません。しかし、実際は絵の役割は三割程度じゃないでしょうか?
世界観、テーマ、キャラクター、シナリオ、ネーム、コマ割り…他にも色々掘り下げるべきことがあります。
今回はその中でも比較的カンタンかつ効果的に生成AIの恩恵を得られるシナリオにおける歴史考証についてお話したいと思います。
具体的には、「実際にどうだったか?」を聞くだけでなく、「こういう設定を考えるなら、どんなパターンが妥当か?」といったことまで列挙してもらったら、非常に物語をつくるのが楽しくなりました。
題材はこちらの作品です。
ケース1. 現代ナースが行える、魔女的行為は何が妥当?
まずはこのシーン
この女性、アリーサは現代からやってきたナースなのですが彼女の行為が魔女的だということで通報を受けます。
この時、現代から来た人だということが匂うように中世の人の知識にはないが現代のナースなら行える魔女的な行為を考える必要がありました。漫画、仁だとペニシリンを精製しますが、ナースですしそこまではできないかなと
実際にChatGPTに聞いてみたところやはりペニシリン、インスリン、抗生物質、ワクチンなど提案されました。
ただ、持ち運びできないので、現場で調合できて、ナースでも現実的につくれるものを考えてもらいました。すると今度はハーブを提案されました。これだとパンチが弱いのでさらに聞きました。
Q.ハーブだとインパクト弱くないですか?他の人が魔女だと思うくらいのインパクトがあるものがいいです。
蜂蜜と酒なら、全然ありですね!採用。
ケース2. 市場でどんな薬草を買う?
これは実際には漫画の中ではテンポ悪くなるので割愛したんですが、アリーサの薬学の知識の匂わせとして市場で薬草を買い、そこでマニアックな質問をさせるというシーンを考えていました。
まずは売ってて違和感のないものを把握。
Q. 十六世紀レヴァルで売っている薬草を教えてください
Q. この買い物をするときに答えてしまってプロだと気づかれたマニアックな回答を教えてください
おお、なんかそれっぽいですね。アリーサはどうやってこれを判断するのでしょうか。見た目?
Q. クルクミンが多そうかどうかは見た目で判断できますか?
うーん、見ただけで判断するとリアリティないですね。産地聞いて、そこで「あ、じゃあ買うよ」的な感じが良いでしょうか。
Q. 産地でわかりますか?
ということは、「インド産?珍しいね。クルクミンが高いのを探してたんだ」みたいなセリフならありそうですね。でお店の人が「クルク…?」みたいなリアクションにして、現代知識無双の補強に使えれば。
ケース3. 異端審問のプロセス
次に主人公カレルの立ち位置と拘留する場所の描写について
私はエストニアそのものには詳しいですが、魔女狩りには詳しくありません。当時は主人公は異端審問官だったのですが、よく調べるとそもそも異端審問官が出張って調査するというより、地域の当局が動いて引き渡す、ということが一般的とのことでした。(実際に他のコマでは異端審問官チックな服装のカレルがいます…笑)
Q. 中世において魔女を異端審問官に引き渡す時、どんなプロセスが一般的だったでしょうか?すぐに引き渡しますか?それとも一度抑留して引き渡しでしょうか?
他にも色々聞いて、カレルは地元の当局とし第三話は場所を移して拘留施設で話させようと思いました。
(異端審問の組織構造やそれぞれの役割のモチベーションなど聞いたスレッドはこちら)
となると、拘留施設ってどんなのだろうと思いますよね。実際上の絵でも描いてますが、これも聞いてみました。
Q. 抑留する場所はどんな場所でしたか?
色々ありますね。雰囲気はわかりました。レヴァルはどうだったのかも聞いておきましょう。
Q. 中世のタリン(レヴァル)においてはどうでしたか?
ふむふむ、勉強になりますね。旧市街はやっぱり画になるので、そこの拘留施設は良さそうです。
ここでさらにエストニアの論文もあたって(カスタムGPTのConsensusを使いました)、さらに詳しい史実も調べましたが、ちょっと沼ってしまったので割愛します。(エストニア語の文献をこんなに簡単に調べられてしかも使える形にできるなんて、世も末ですね。(いい意味))
では拘留施設はどんな見た目なんでしょうか。ざっくり見せてもらいましょう。(DALL-E3で生成)
なるほどなるほど。いい感じですね。でもこの屋根なに?笑 神社みたいですね。
ハルシネーションは注意したほうが良さそうです。
では取り調べのシーンはどこが良いでしょうか。取調室に移動させたほうが良いのか(そもそもある?)この独房に入らせたほうがいいのか。そもそも即座に異端審問官に引き渡してしまうのでしょうか?
Q. 取り調べはこの抑留施設で行いますか?
たしかに。キリスト教はやっぱりイタリアとかあっちのほうのが強いので、レヴァルではそこまで魔女狩りも重要視されてない可能性が高いです。
それだと、施設が整い過ぎていても変ですね。取り調べ用の部屋とかあったんでしょうか?
Q. 取り調べは取り調べ室があったのでしょうか
このあと少し調べたら当時のタリンのこういった施設には取調室は無さそうということがわかったので、独房で話を展開させることにしました。
また、同じスレッドで拘留施設の外観も出してもらい、漫画に落としたのがこのシーンです。
いままでの質問の経緯を知っているからか、ぽんと聞くだけでそれなりの絵が出てきました。このあたりはチャット形式のマルチモーダルなAIならではですね。
ケース4. 歴史上の人物の描写
これも実際には使っていないのですが、話を今後作っていく場合おそらく使えるネタとして実際のレヴァルの宗教改革において活躍した人を探しました。
Q. この時代のレヴァルで宗教改革絡みで活躍した人たちをエストニア語で探して、そのURLとともに教えてください
だいぶいいですね。エストニア語は読めないので非常にありがたいです。もっと詳しく聞きました
いいですね。重要人物として登場させたくなってきました。
これ、いつかはエストニア語でも翻訳して描きたいので、そのときに恥ずかしくない設定にしたいですね。
ケース 5. 名付け
名前も意外と苦労する点の一つです。適当な名前つけるのも微妙ですし、できるだけ凝ったものにしたいですよね。
たとえばエストニアで現代っぽい名前となると、Mikk-Markusのように2つ繋がった名前だったり、ロシア系の名前だったりします(中世はデンマークやスウェーデン系)。
アリーサは現代人なのでロシア系を感じる名前にしました。カレルはエストニアによくある名前です。
カレルのお姉さんは非常に重要なのでエストニアの神話から取りたいなと思ったので相談しました。
Q. エストニアの神話からカレルの姉の名前に相応しいものを選んでください
リンダ、良さそうですね!ちゃんと調べたらカレヴィポエグのお母さんで、リンダ山ではなくリンダ岩でした。まあ、物語に影響はないハルシネーションだったので良しとします。笑
というわけで魔女リンダはここから生まれました。
ChatGPTは歴史考証、そして物語をつくるためのつよーい味方!!!
思ったよりかなり長文になってしまいました。書きながら「そういえばこれも聞いたんだよな」と思い出して付け加えてしまいました。
今回は歴史考証のみですが、世界観、テーマ、キャラクター、プロットなど様々なところで生成AIを使っています。
歴史考証はその中でも一番わかりやすく、試しやすいものなので、ぜひぜひ思いつきベースで「この時代でこんな話つくるとしたら、具体的にどんな設定がありうる?」など聞いてみましょう!
他の要素に関しては、また別の機会に紹介したいと思います。
少しでも興味を持っていただけたら、ぜひこちらのマガジンも見てください!
今後も生成AIを実験的に使った作品をどんどん上げていきたいと思います。
画像生成の世界は著作権まわりにまだグレーな部分も多く、怖いと思う方もいるかもしれません。でも個人的にはいままでにない新しいものをつくるためのツールとして使いこなせたらと考えています。
面白い漫画、また技術記事が書けるようにがんばりますので、応援宜しくお願い致します!