読売新聞を読む(2023年03月15日)

 2023年03月158日の読売新聞(西部版・14版)の一面。「日韓正常化 共通の利益」という見出しで韓国大統領への単独インタビューが掲載されている。編集局長の解説も載っている。私が注目したのは、次の発言。とてもおもしろい。
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「両国関係を正常化することは、両国共通の利益に合致するだけでなく、国際社会に非常に肯定的なシグナルになると期待している」と述べた。
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 このことばは、本文記事だけではなく、編集局長・前木理一郎のなかにもそっくりそのまま掲載されている。
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「関係正常化が両国の利益だけでなく国際社会全体にとって非常に肯定的なシグナルとなる」と、揺るぎない意志を強調した。
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 「日韓正常化」が日韓両国の利益「だけでなく」、「国際社会」に貢献する。まあ、論理的には、そういう帰結にはなるけれど、「国際社会」のことは気にせずに(?)、何よりも「徴用工問題」でギクシャクしてきたのだから、この「方針転換」は、とても大きい。
 前木の文章には、こういう部分もある。
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ロシア、中国、北朝鮮が覇権主義を強め、緊迫化するアジアの安全保障環境下、日韓関係の重要性は論をまたない。
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 「ロシア、中国、北朝鮮」ということばが出てくるが、これは「国際社会」に含まれているのか。「ロシア、中国、北朝鮮が覇権主義を強め」と書いているから、この三国は「国際社会」から締め出され、そのうえでの「アジアの安全保障」ということになるだろう。「国際社会」は「アジア」ということになる。つまり北朝鮮の核(ミサイル)と中国と台湾の関係になる。どちらも、いちばんの「対立国」はアメリカである。
 だから、
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「両国関係を正常化することは、両国共通の利益に合致するだけでなく、国際社会に非常に肯定的なシグナルになると期待している」と述べた。
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というのは、

両国関係を正常化することは、両国共通の利益に合致するだけでなく、アメリカの考えている国際社会(秩序)に非常に肯定的なシグナルになる

ということなのだ。
 で。
 さきの韓国大統領と、前木の文章に出てくる「シグナル」ということば。これは、いったい何だろう。どういう意味だろう。わざわざ、「シグナル」ということばをつかったのは、どうしてだろうか。なぜ、「両国関係を正常化することは、国際社会の安定に貢献する」と言わなかったのか。私が思うに、これは、アメリカへの「シグナル」であって、国際社会へのシグナルではない。アメリカのために、日韓は協力します、というシグナルにすぎない。
 韓国大統領は、こんなことも言っている。
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 「北朝鮮の核・ミサイルの脅威に韓国だけでなく日米もさらされている」として日米韓安保協力が「非常に重要だ」と強調。北朝鮮のミサイルを探知・追尾するレーダー情報の即時共有を進める意向を明確にした。
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 北朝鮮の核・ミサイルが、ほんとうに韓国にとって「脅威」か。もちろん攻撃されれば、被害は壊滅的だ。だが、おなじ民族の北朝鮮が韓国に対して、そういう攻撃をするだろうか。私には、そうは思えない。
 ベトナムではおなじ民族が戦争した。しかし、いったん統合すると、あっと言う間に融合した。東西ドイツは戦争をしたわけではないが、政治的対立があった。しかし、いったん統一されるとあっというまに融合した。北朝鮮と韓国もおなじだろう。対立を産み出しているのは「政治体制」であって、国民は対立などしない。
 「台湾有事」についても同じことがいえる。いまだって、中国と台湾のひとは行き来し、交流している。「政治体制」が違うだけで、国民(民族)同士は戦ったりはしない。
 韓国大統領を陰で動かし、なかなか表に出ようとしないアメリカの存在、アメリカの戦略から、「日韓正常化」を見ないと、これから起きることがわかりにくくなるのではないか。
 「日韓正常化」ができたことで、アメリカは心置きなく「台湾有事」にむけて世界を誘導できる。「台湾有事」になれば、その近隣の日本、韓国を活用すればいいのである。アメリカは太平洋の向こう側。そこまで中国が戦線を拡大するはずがない。
 だいたい、中国は、「領土」を拡張しようとしたことなど、一度もないのではないか。中国人は、領土を拡大する変わりに、世界のどこへでも進出し、そこに「チャイナタウン」をつくる。中国から家族を呼び寄せる。アメリカのように、先に生活していた人間を追い出し、支配し、「国家」をつくったことはない。
 チベットなどの問題はあるが、チベットについては、もともと「中国」という意識が中国人にあるのではないか。チベットで中国政府がおこなっていることは、「アメリカ国家」が先住民族に対しておこなったこととかわりがないだろう。そういう意味では、中国は「アメリカ国家」のまねをチベットでしている、ということになる。
 脱線したが。
 たとえば中国のチベット対策を問題にするなら(ほかの問題もそうだが)、それがアメリカの進めている「世界戦略」とどこが違い、どこが似ているかを考えることからはじめないと、大きな間違いに突き進むだけだと思う。
 日韓関係が大事というとき、アメリカが日韓関係に何を期待するかではなく、純粋に日韓だけのことを考えればいいだろう。アメリカが反対しても、日韓関係を改善すればいいだろう。燐国である。遠いアメリカのことなんか、気にする必要はない。

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谷内修三
マスコミ批判、政権批判を中心に書いています。これからも読みたいと思った方はサポートをお願いします。活動費につかわせていただきます。