「ワルイコあつまれ」にあふれるEテレごころ。
もうご覧になっただろうか。
今朝始まったEテレの新番組は事前告知なし、その戦略は見事に功を奏したようだ。
私はEテレにチャンネルを合わせることはほぼない。
「ワルイコあつまれ」はまさに私のような人間にも目を向けさせるような話題性と斬新さがあり、子供だけではなく幅広い年齢層をターゲットにした内容になっている。
その面白さや興味深さを伝える為の使者として白羽の矢が立ったのは新しい地図、稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾の三人であった。
適任というか、寧ろ戦略的にはこの三人より他にいなかったのではと思う。この三人なら老若男女問わず好感度、認知度、そして新たな挑戦を体現するには抜群だ。
「慎吾ママの部屋」での慎吾ママと徳川慶喜のタイムスリップトークは弾けた慎吾ママと神妙な慶喜(草なぎ剛の演技力を遺憾無く発揮)の様々なギャップが炸裂する奇妙さにじわじわと笑いが込み上げる。
しかしながらそこはEテレ、史実に基き歴史的な学びを交えつつ、慶喜のエピソードを慎吾ママが現代に置き換えながら解説してゆくのはとても身近に感じられ、日本の今昔の共通点を見出だせた気がした。
そして第一回のゲストに徳川慶喜、いいとも形式で繋がる第二回のゲストが渋沢栄一。
天晴れ、Eテレ。
実にタイムリーでずるい。
実に見事な番宣。
日本放送協会おそるべし。
そして稲垣吾郎の「芸能界むかしばなし」の初回はまさかの「勝新太郎」
はたして子供たちに彼の数々の武勇伝をそれもEテレで伝えてもよいのかという疑問がまず湧いたが、にこやかに読み聞かせを始めた稲垣吾郎に掻き消される。
コンプライアンスって何?的な昭和のど真ん中を生きてきた勝新太郎のはちゃめちゃなエピソードを「お芝居が好きでお芝居のことばかり考えていた」というキーワードを使い、巧く纏められ、最終的には人間の本質を軽く抉りながら締めるという。
これもまた稲垣吾郎独特の柔和な空気と演技、培われたエンタメ性で説得力が充分過ぎた。ごちそうさま。
香取慎吾の「おとなのダンス音楽」はダンスはいろんなバージョンがあるのかも気になるところ。
あえて「おとなの」というタイトルになっているからにはおとなが若い世代に歩み寄る切欠になり得る。家族で見れば子供たちが親にダンスやラップをレクチャーし、コミュニケーションが取れる良い機会になるのではないだろうか。
それから「国宝だって人間だ!」のコーナー。これは個人的にとても感心した。
日本古来からの伝統の技を護り磨き続けている「人間」に光を当て、その技を紹介し、子供達が疑問をぶつけるというストレートな内容。
第一回のゲストは人形浄瑠璃文楽の桐竹勘十郎氏。
「人間国宝」と聞くと私のような一般人には程遠い、まさに雲の上の人という印象だ。
今回それを払拭し、我々とは別世界のことではなく同じ日本で身近な存在で伝統は息づいているのだと教えてくれているような気がした。
子供らしい無邪気な質問がある中で、「ロボットに代わってほしいと思ったことは?」という質問が。
桐竹勘十郎氏の答えがロボット技術をリスペクトしつつ「今は負けたくないです。絶対にロボットには負けたくないと思いながら今も毎日修行をしています」という言葉が印象深かった。
実に「人間」らしい言葉だ。
日々の努力や鍛練を怠らない姿勢というものを、日々精進する「国宝」に教えられた。
このコーナーを見て人形浄瑠璃文楽に興味を持ち人形遣いに、という子が将来出てきたらなんて期待を持たずにはいられなかったりもする。
「ワルイコあつまれ」はタイトルからして興味をそそられるネーミング。
人間、しちゃだめと言われるとしたくなるし、ワルイコがあつまる世界をヨイコも覗きたくなる。
その天の邪鬼さをいい塩梅に刺激してくれたセンスと、いざ足を踏み入れた先に広がった世界で新たな景色を見せてくれたEテレと新しい地図の三人に拍手。
学びという概念の堅苦しさを楽しさで覆すEテレごごろ、流石だ。
次の放送が既に待ち遠しい。