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第二の人生晴朗なれど波高し~家族葬〜私の場合
臨終
2023年2月10日の朝、母は94歳で息を引き取りました。
文字通りの眠るような死。
前夜、私と話すうちに眠りにおちた母は、安らかな寝息さえ立てていました。
おかげで、朝8時に医師が臨終を宣告に訪れた時、「あぁ、○○さん、笑ってるようだね。」と言ってくれたことが、私に最高の弔意に思えました。
家族葬
母が「街中に私の名前貼り出されるのは嫌だ」と言っていたのを覚えていました。
家族葬は、施主が連絡した人しか原則来ません。
母の姉妹たちは、97歳になるはずの、華麗なる自由人の伯母以外は既に黄泉路の人でした。私の従兄姉達でさえ、半分が鬼籍に入っていました。
施設にいる97歳の人に、妹が死んだとわざわざ知らせる、酷な話は、家族葬なら必要ない訳です。街中に貼り回っていろんな人を悩ませる必要もありません。私は、父方の叔父(一人は元気、一人はかなり弱っていた)にも、従姉妹たちにも連絡しませんでした。
(あとから、喪中欠礼の形に一筆添えての挨拶としました。)
実は、父の時に着席のまま、こちらに礼をなさる参列者に、お辞儀し過ぎて、葬儀後何日も、背中と腰が痛かったので、母自身の言葉もあり、世の流れとしての家族葬は、私には助かりました。
今、鬼籍に入る方の多くは、まだ兄弟数の多い時代の人ですから、家族葬の線の引き方は 、故人の年齢、ここ数年の社会との関わりなど、各家、施主の考えでだいぶ違うでしょう。
私は、火葬場で、救急車が来るという体験があります。知り合いにも、似た体験者がいて、そう珍しい話ではないようです。
「家族葬は故人の直系のみで」という考えが、私にはありました。まして、二月の極寒期です。
古い街で、隣近所に、親戚が数件あり、これは「若い代」の方に来て頂くことになりました。
家族葬は施主挨拶はないので、これも気が楽です。
葬儀屋
葬儀屋さんが決まっていることは、この場合気が楽です。
家族が亡くなった時の、膨大な手続きの初日の部分は葬儀屋さんがやってくれます。
代行した内容も含めて、葬儀終了後の公的手続きの順序、方法、機関と期間も含めて、書いてあるプリントもくれます。
父の時の経験があるので、葬儀屋さんの存在がいかに心強いか、知っていました。
私は、まだ仕事をしていて、更に股関節を患っていたので、古くから知り合いの葬儀屋さんで、お金には代えられない力になりました。
予備
うちの場合、親戚代々知り合いの葬儀屋さんです。元々お茶屋さんで、葬儀の飾り物やお返しを扱ううちに、葬儀屋を兼ね、ホールを建設し、本格的になった葬儀屋さんです。
葬儀屋さんも、最近は「人形供養」などという、わかりやすいお試しサービスをしてくれています。
この時行って、お試しランチ¥500などをいただくと、それで会員になったりします。
相続問題も含めて、「知るべき覚悟」についてプリント配布など、親切度合いで決めておくこともできます。
世間並み
施設に迎えの車で来てくれて、1回家に母を安置します。
その枕元で、葬式のコースの説明と選択です。「〇〇さんのお宅なら、ここから上で」なんて言われて、下1/3は隠されて…代々知り合いだと、全て言うがままにならざるを得ません。
うちは「小さな家族葬⁉️」の一番上になってしまいました。
高齢者の亡くなる時期は、秋冬が多い気がします。
火葬場が予約いっぱい。
家で、一晩仮通夜をした母の遺体は、ホールの背後の冷蔵庫に預けます。一泊一万円+、これもどうやら東京並み。
納棺師、納棺式…いつから⁉️父の時はなかったのに…
エンバーミング(母は笑顔のようでしたから必要なし)、化粧、など。
いろいろ足していく葬儀屋さん。
アレッ高い❢と思っていたら、サービスになるのか…
結論、だいたい同じのカラクリが見えてきます。
周囲の平均
葬儀費用は、相続財産がそれなりにある家(新しい法規で総控除額を超えてしまう家族)なら、やはり百万円用意しておいた方が安心です。母からの伝言の額でもあります。
市町村役場から、埋葬費用の補助もあります。(後からで)
相続税から控除されるので、手前を憚る状況のある場合も、百万円位は用意したらと思います。自分の葬式代ぐらい、とはこの事です。
お寺の戒名代がバカになりません。
八十歳で逝った、父の時は、一般葬でしたから、全員生きていた母の姉妹、母方従兄姉、父の弟妹、父方従姉妹。お祭り男の父の知人、と、香典で、ほぼ帳じりが合うのです。
94歳。友も姉妹も集えない、母は、そうはいきません。
しかし、二人の苦労の累積の結果として、父からも母からも十分な資産を受け継ぎ、大学まで出してもらった私です。
家族葬75万円、戒名代60万円(信女もつけて六文字)は、世間並みと思っています。
祖父が亡くなった後に、綺麗に揃った墓誌を見ながら父が何気なく言いました。「親を超える戒名なんかつけないでくれよ、親不孝になるから。」良い教えだと思っています。
それなりに高齢で亡くなられた親御さんの子は、半年もすれば、あらゆる苦労話ができます。お金の話も。
で、家代々の墓地があり、菩提寺が決まっている家の家族葬は、不思議なことに似たか寄ったかの額でした。
ホール葬
これも楽です。断固「寺葬」の宗派もあるようですが、結局戒名代込なので、知り合いに聞くと、トータル似たか寄ったか。
令和になり、コロナ禍が遺した唯一の功績のような「家族葬」が増えました。通夜〜告別式〜初七日法要、全て午前中に終わる一日葬。
午後納骨と後で聞かれて答えたら、いいねぇと言われました。
私の祖父母の頃は、町内会が主体の自宅での葬式で、隣近所のン十人の手を借りてするので大騒ぎ。仮通夜〜通夜〜葬式〜初七日法要。幼心に見ているだけで疲れました。しかも、後で必ず《揉め事》や《陰口》が残るのです。葬式泥棒なんて話も、よくあったみたいです。
ホール葬が主流になっても、受付は施主の会社とか、近所がやるとか、これもなかなか悩ましかったです。それも今はホール側でやってくれます。
生花
祭壇を選びます。
花で埋め尽くす祭壇は割高。
祭壇の両側に、故人の子供、親戚、知り合い、などから、生花がよく並びます。一基¥15,000~¥25,000位。
家族葬だと、生花は少なめですが、6基もあれば…と。
母の祭壇の花だけでは、母の棺に入れる花が足りません。
職場に電話します。
「家族葬で致しますので、ご参列、御香典は、固くご辞退致しますが、勝手ながら親睦会などのお花は頂きたいです。」
こうして、「うちの娘はガッコのセンセ」を自慢していた母の祭壇の周りに、4基の〇〇高校の花が置かれて、その花に包まれて母は旅立ちました。
人生の皮肉な悲しみ。
それでも、私は仕事をしていて良かったと思います。
病院を追い出された母を、3カ月も私に変わって看てくれた夫に感謝します。
(追い出された2021年5月は、私の退職前年で、新学年が始まっていて…私も土日の交代…)
たぶん、母方に似れば、長生きするであろう私も(今は聞かない)娘たちに、この場を借りて書き置いています。
和泉式部の小式部内侍に先立たれた歌を思い出します。
とどめおきて 誰をあはれと思ふらむ 子はまさりなむ 子はまさりけり