小説未満の供養です

結局誰1人として目を合わせられない儘、時間だけが過ぎていった。
彼等は盲目的に私を愛してくれている。
手離しで私を受け入れてくれる彼等に、時折少しの歪さと拒絶感と為体を感じてしまう。
私が彼等をちゃんと見ていないから、私をちゃんと見ているのかと問うてしまうのだろう。
本当に異物なのは私の方なのに。
私が居なければ屹度彼等は彼等の儘、皆で一つに過干渉する事もされる事もなかったんだろうな。
私が彼等を繋げたのは事実で、それ以上に彼等に悪良何方の影響も与えてしまったのも事実で。
離れなければ彼等の霞が晴れる事はないと分かっているのに、如何にも足は踏み出せない儘
唯時間だけが過ぎていく。

思えば彼等の目はどんな色をしていたんだったっけ。

醜い心内を隠すように避けていた視線の弊害に酷く焦る。
思い出せない。
こんな色だったか?否違う。じゃあこんな色?そうじゃない。
正解が分からないのに否定だけは誰よりも上手くて、絵の具が減ってキャンバスは塗り潰されていく。
いつしか主軸となる線でさえ見えなくなって、其処でやっと誰とも目を合わせていなかった事実に気付いた。
私の莫迦な冷徹にも気付かず彼等は何時もと同じように此方を見て言を紡ぐ。
あぁ、そうだ。その儘気付かないでいて。
私が君達の前から消えられる日迄、ずっと気付かないでいて。

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