6 住宅の循環について R4.6月定例会一般質問⑥最終回
最後に、住宅の循環について伺います。
空き家の問題はどの地域でも悩みの種です。しかし、所有権の強い日本の法律では、なかなか抜本的な解決は難しい。先日、上山のランドバンクを視察しましたが、精力的に活動はできているものの、所有権との狭間でどんどん空き家を減らすという状況までには至っていません。兵庫県などでは空き家活用規制緩和条例を制定しているようですが、これも有効な部分は見受けられますが、やはり抜本的というところまではいっていないようです。
ただ、地元の天童などをみると、市街化区域においては広い敷地の空き家がでるとハウスメーカーがその土地を細かく数軒に分譲して安く売る、ということがよくあります。一方でこれが市街化調整区域の場合、最低面積や優良田園住宅でないとダメといった規制があるため、なかなかこういう分譲は無理となります。結果、若者が市街化調整区域から離れて中心部に行き、周辺地域から子どもがいなくなる、という事態を生んでいるのです。
市街化区域と市街化調整区域という制度は、人口が伸びている時代に乱開発を防ぐ意味では有効だったでしょうが、人口が減る中で地方創生をせよと言われる山形のような地方にとっては、足枷になっています。市街化区域を広げようにも、どうせ人口が減るのだからと言われて許可されません。こんな状態でどうやって人口を増やし地方創生をしろというのでしょうか。都会にコンパクトシティを求めるのはわかりますが、地方にも一律に求めるのでは住宅開発できずに益々若者が流出してしまいます。
国の制度はひとまずおくとしても、今語った小さな家でないと若者が買わない、という話は、日本が抱える重大な課題です。
昔は三世代同居が基本で、長男以外の兄弟は分家して自分で家を建てる、という形だったのでしょう。むろんそんな前時代的な社会風潮はなくなって久しいですが、純粋に生涯所得から住宅にかかるお金を引くという考え方をすると、借家だったりローンで家を建てたりすれば、手元に残るお金に大きな差が出ます。つまり三世代同居の方が財産が築きやすい。山形県は三世代同居率が高いとされ、それを推奨する施策もあったようですが、祖父母との同居による子育てのしやすさもさることながら、三世代同居の方が住宅にかかるお金が得、という考えをすべきでしょう。
ただもちろん、三世代同居率はどんどん下がり、たとえ親の持ち家があるとしても、自分の家を建てるという傾向にあります。純粋に親と住みたくない、地域のしがらみが嫌だ、など様々な要因が考えられますが、三世代同居しろと強制もできません。
しかし、若者が自分で家を建てる場合、いまだそれほど給料が高くないこともあって、どうしても、狭い土地に核家族が住める程度の家しか建てないことになるのです。結果、安い分譲の家を若者は求め、狭い分譲が建てられない市街化調整区域から離れて市街化区域に流れるという現象になるわけです。
周辺地域の人口維持が難しくなるという問題もありますが、そういった狭い家は車も二台分ほどしか止められないし部屋数も少ないですから、子どもが成長したときに結局一緒には住めません。子どもが出て行ったあとに夫婦二人暮らしとなり、その二人が亡くなるとまた空き家になるという事態になります。
ただこれは嘆くべきことでもないでしょう。なんとなれば欧米などではそれが普通だからです。子どもは自立したら家を出て自分の家を持つのが当然で、日本の今の傾向と大きく違うものではありません。むしろ一人暮らしより結婚して二人になった方が住宅費が得、ということで結婚促進になるくらいだとも言えます。
ただ、日本の傾向と大きく違うのは、欧米の場合、ライフステージに合わせて住宅を住み替える、という点です。子育て時代には郊外の広い一軒家に住みますが、子どもが出て行って身体が動かない高齢者になったら中心部のアパートに住む、といった具合です。
翻って日本の場合、広い庭や駐車場が必要な子育て世代が中心部の狭い家に住み、独居老人が郊外の広い家と庭を草刈りもできずにもてあます、という状況にあります。
これを逆にしないと、つまりライフステージに合わせて適切な広さの家に住み替えるという状況をつくらないと、若い世代はローンに首が回らず、高齢者は郊外で歩いて買い物にも行けない、ということが続きます。いわば住宅の循環を促進せねばならないのです。
しかしこれは言うは易しで、行政がそうした風潮を誘導するのはなかなか難しいものでしょう。例えば、行政も関わった上で空き家を若い家族、特に介護士や保育士などの、必要だが地方では人材不足で、しかもなかなか所得が上がらない方々に、準公営住宅のような安い値段で住んでもらう。あるいは、空き家のリフォーム補助は所有者じゃないともらえないが、なかなか荒れた空き家をあえて買う決断はしづらいので、宅建業者や建設業者がリフォームして若い世代に売る際にも適用させる。逆に高齢者が中心部の便利な場所に移り住む際には補助を出す、などが考えられます。リバースモーゲージの活用も有効でしょうか。
空き家の話ばかりが問題なのではありませんが、住宅の循環といった未来に向けて、まずは空き家の問題解決が糸口になるかもしれません。
いずれにしても、ライフステージに合わせた住宅の住み替えという課題は、今後の住宅政策を考えるのに重要と思いますが、県土整備部長の考えを伺います。