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茶の発酵:酵素的酸化か、微生物発酵か

「茶の発酵」と聞くと、一般に紅茶や烏龍茶を連想する方が多いでしょう。しかし、これらの茶は酵素による酸化反応で、微生物が関与する本当の発酵とは異なります。

例えば、りんごの断面が時間経過とともに褐色に変わるのは「酵素による酸化」です。一方、りんごに含まれる糖が酵母によって分解され、アルコールと二酸化炭素が生成されるのが「発酵」です。褐変したりんごとシードルは全く異なるものです。

茶業界には以下のような考え方もあります。

紅茶やウーロン茶は確かに微生物の作用と無関係であるので、発酵という言葉の使用は不適切である。しかし、微生物発酵茶も微生物内にある酵素の利用によるものである。ウーロン茶や紅茶も生物体が保有する生体触媒といわれる酵素を利用した産物であり共通な点もある。要するに、茶の発酵は、最終的には すべて酵素の作用によるものであるといえる。それでは、ウーロン茶や紅茶の場合、発酵に代わる用語として、どういう言葉が適切か筆者には思いつかない。今後の一つの宿題として誰かがよい 名称を提案されることを期待するところである。

茶の文化11号(全茶連)発酵茶にまつわる問題 中川致之

微生物の生命活動は、非常に複雑で連続的なプロセスと相互作用から成り立っています。これは単なる酵素反応では説明できません。

製造過程を理解すると、その違いがさらに明確になります。酵素的酸化は数時間から最長で1日程度に限られていますが、それは主に化学反応によるものです。一方、微生物発酵は生命サイクルに基づいた複雑なプロセスであり、最短で1週間、長い場合は1ヶ月にも及びます。

このように、酵素的酸化と微生物発酵は根本的に異なるプロセスであり、その持続時間や複雑さにも大きな違いがあります。

したがって、酵素的酸化を発酵と呼ぶのは誤りであり少なくとも茶業者は正すべきです。酵素の働きは複合的で、酸化に限らないという考え方もありますが、主要な作用は酵素的酸化であり、酵素的酸化若しくは酸化が適当かと思います。


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