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救急車乗り逃げ事件
Column~№60
埼玉県久喜市において自宅に救急車を呼んだ男(46歳)がこの救急車を自ら運転して病院へ行こうとしたとして自動車の窃盗で逮捕された。この男は当時酒に酔った状態で臨場した救急隊員が「搬送は不要」と判断して現場措置を講じていた。すると男は突然激怒して刃物を持ち出したことから救急隊員が避難した隙に救急車を盗んだという。
人命を救うための救急車を勝手に乗り出すというとんでもない話だが、酔っ払いと救急車との問題は私もいろいろな経験をしている。
酔って怪我をした場合に110番通報で警察が先に臨場する場合もあるが、119番通報で救急隊が先に臨場する場合もある。また怪我もなく単に寝込んでいる場合もある。どちらの通報でも素直に救急隊員の指示に従う者であれば問題はないが、暴言を吐いたり暴れる者も少なくない。すると警察が呼ばれることになるのだが、呼ばれて現場で終われば良いが一緒に救急車への同乗を依頼されることがある。
この場合、救急車の車内で暴れると困るという救急隊員からの依頼もあるが、搬送先の病院の医師が警察の同行を求める場合もある。実際に暴れているのであれば同乗するが「可能性がある」ということで依頼されることが多い。警察としては「通報してもらえればすぐに駆け付ける」と言いたいところだがそれは口にできない。と言うのも酔っ払いが負傷していれば警察は救急隊員を要請して診断をお願いするからだ。昔であれば住所が分かれば送り届けたり、または保護したりしていたが、容体が急変して亡くなる事案などから救急隊員を呼ぶようになった。そのため警察も救急隊員の依頼を断るわけにはいかなくなった。
この酔っ払いも静かに保護施設で寝ていれば問題はないが、暴れたりするため拘束具を使用する。そのため容体が急変して死亡する事案が後を絶たないという現実がある。警察庁はこのような事案の再発防止に向けて監視体制を強化するよう全国の都道府県警察に指示しているが、1名の監視員を捻出することは夜間の時間帯は想像以上に難しい。
保護施設の使用は酔っ払いだけでなく精神錯乱者にも使用するが、保護施設使用に伴う事故の根絶は絶対に必要だが口にするほど簡単なことではないというのが現場の感じているところだと私は考える。
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