闇バイトに対する仮装身分捜査
Column~№47
警察庁は闇バイトに応募して実行役らを検挙する新たな手法として仮装身分捜査を検討していることを明らかにした。仮装身分捜査とは架空の運転免許証によって闇バイトに応募して関係者を逮捕しようという囮捜査である。
運転免許証を偽造することは違法行為に該当するが「法令または正当な業務による行為」は罰しないと規定している。そのため法的に問題はないとして仮装身分捜査が検討されることになった。
ただ薬物や銃器の取引においてはすでに身分秘匿による囮捜査は容認されている。したがって犯罪の対象枠を広げる形になるのか、すべての犯罪に仮装身分捜査を許可するのかはまだはっきりとしていない。
この身分偽装に関しては真偽の程は不明だが、安保闘争時代に公安警察は別の人間に成りすまして情報収集をしていたという話を聞いたことがある。単なる都市伝説なのか、当時は警察官も殺害されていたため、そこまで許可していたのか分からない。しかし身分を偽装した捜査は世界で行われている。
個人的な意見としては導入が遅いと思うくらいで、是非とも積極的にすべての犯罪に導入して欲しいと思っている。そして闇バイトだけでなく囮捜査そのものが求められる時代になっていると感じる。
被疑者が逮捕されても完全な被害回復などできず、しかも金が欲しくて犯行に及んでいる者に弁済する方法などない。その点を踏まえれば未然に防ぐ手段は拡充させるべきだと思う。ただ囮捜査に従事する捜査員の精神的負担は計り知れないため、そのケアーも重要になるだろう。
ただもう1つ検討して欲しいのが罰条である。日本の刑法は予備罪を規定した罪もあるが大別すると未遂と既遂となる。未遂には自ら改心して既遂に至らなかったものと不能犯のように元々結果が発生しないものがある。
囮捜査は基本的に犯罪を未然に阻止するためすべてが未遂になるが、これは捜査機関が逮捕した結果であって本来は既遂になっている。それを踏まえれば既遂と同等の刑罰を課すべきであり、決して未遂だからと言って刑を軽減すべきではないと思う。
偽装身分捜査によって1件でも、そして1人でも被害がなくなる日が1日でも早く訪れることを願っている。