人づてを「見聞き」に入れて大丈夫!?
Column~№9
兵庫県知事のパワハラ問題で県職員に対するアンケートの中間報告を報じた記事で私は違和感を覚えた。それは「噓ではないが完全に世論操作を意図したもの」と感じたのである。
まず冒頭に申し上げるが、私は兵庫県知事を選ぶ投票権もない第三者であるが、パワハラ問題には不快感を覚える。パワハラは看過すべきではなく、また本人が「業務上必要な指導」という内容もパワハラに該当すると思っている。したがって兵庫県知事を擁護する気など全くなく、その行為は糾弾されて然るべきであり、言い訳とも感じる説明には理解もできない。
だが兵庫県知事のパワハラを見聞きした人が4割とする報道は別の問題である。そしてアンケートの回答方法が報道通りであれば、これもまた不適切である。
アンケートは「実際に知っている」「知っている人から聞いた」「人づてに聞いた」「知らない」の4項目を選択することになっていたそうだが、正しくは「実際に受けた」「受けた人から聞いた」「第三者から聞いた」「知らない」にすべきではないだろうか。
おそらく「実際に知っている」が私の言う「実際に受けた」「受けた人から聞いた」に該当するのであろうが、「知っている人から」や「人づて」が伝聞、つまり噂の類いを排除しているのか疑問である。
私もアンケートを作成していたので分かるが、どのように質問するかによって狙った回答が得られる。「知っている人から」が当事者から聞いた人の話を聞いたという3次情報や、「人づて」が報道を通じて知った人から聞いたことをきちんと区別していなければ数字は上がって当然である。したがって私はアンケートの詳細な質問及び回答方法を知らないため、報道が簡略して報じたことを信じたい。そして私の勘違いであることを願っている。
しかし記事に掲載された「見聞き4割」は指摘させていただく。この4割には「人づてに聞いた26.8%」が加えてある。人づてとは漢字で「人伝」と書き、他人を通じて話を聞く意味もあるが、「仄聞(そくぶん)」という噂などで少し耳に入るという意味を含んでいる。そんな不確かな噂の類いを「見聞き」という言葉を使って4割の見出しを付ける必要があるだろうか。
「実際に知っている」という人は1.3%だが、1.3%は59人にもなる。分母ばかりを気にするから4割にしたいのだろうが、実際には59人もの証人がいる。そんな意味では誇張広告のような記事をやめて、どう報じるかを考える必要があるのではないだろうか。