尹大統領の逮捕中止
Column~№54
韓国の合同捜査本部は大統領警護庁による抵抗で尹大統領の逮捕令状執行を中止したと発表した。大統領警護庁は職務権限を失いながらも大統領であることを理由に警護の手を緩めていない。合同捜査本部は令状の強制執行によって捜査官が負傷することを懸念しての判断だという。裁判所の逮捕状が発布されている中で、令状が執行されないというのはなかなか理解できない。特に日本は直接選挙の大統領制ではないため、さらに理解が難しい。
戦後の日本では元総理大臣だった人物が逮捕されたことはあっても現職者が逮捕されたことはない。国会議員の逮捕は不逮捕特権によって国会での承認を必要とするが、実際に現職の総理が逮捕となればどうなるのだろうかと考えた。
日本の場合は逮捕者が東京地検特捜部になるだろう。それに対して総理が辞職していてもいなくても警護が付くが、警護は警察の管轄である。韓国の構図で言えば合同捜査本部が東京地検特捜部、大統領警護庁が警察となる。東京地検特捜部は法務省で警察は警察庁。つまり韓国と同じ別組織が対立することになるが、韓国と同じように総理の逮捕を警察が阻止するのだろうか。私は否定的に考える。
法的な問題から論じると東京地検特捜部が執行する逮捕状は国会の承認を得た裁判所が発布した正規な令状である。(まぁ、韓国も正規なものだが……)
次に逮捕状の執行を警察が阻止すれば東京地検特捜部に対する公務執行妨害が成立する。そして阻止を命じたとなれば警察庁長官、もしくは警視総監までもが共犯となる。したがって警察が逮捕令状の執行を阻止するよう命じれば、東京地検特捜部は徹底して警察庁や警視庁幹部を逮捕するだろう。
だが日本の場合は阻止を命ずることはないだろう。逮捕状が発布された段階で、またはその前の段階で法務省と警察庁は協議を終え、逮捕に協力するのではないかと思う。ただし国民からの支持を得ての逮捕と言うことが1つの条件になるだろう。
韓国の場合は国民の半数以上が大統領の戒厳令を違法だとして職務権限の停止を指示した。それでも逮捕を強行しないのは、本当に強制執行による負傷者を懸念してのことなのか。どうもこの辺の動きには裏があるように思える。