松坂屋美術館「キース・へリング展」から学べること
現在、名古屋の松坂屋で開催中の「キース・へリング展」。
この展覧会、自分は、キャリア教育に関わる者として、ぜひビジネスパーソンや教育に関わっている方々に行ってほしいと思っている。以下にその理由を述べていきたい。
ビジネスとアートとの関係
大前提として、ビジネスパーソンとアートって、関係があるのか?っていう質問がよくあるが、近年、アメリカなどでは大企業の幹部たちがこぞって美術系の大学院に行ったり、ビジネスパーソンが美術館のセミナーに結構参加したりするなど、ビジネスとアートの結びつきが強まっている。
確かに、アメリカではワシントンポストの1面に美術の話題が載ることもあるぐらい、アートの位置づけは高いように思える。
それに、近年、アートとビジネスの関係を論じた本はいくつか出ている。下にいくつか列挙しておこう。
・山口周『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?経営における「アート」と「サイエンス」』光文社 2017年
・三浦俊彦『東大の先生!超わかりやすくビジネスに効くアートを教えてください!』かんき出版 2020年
・山中俊之『「アート」を知ると「世界」が読める』幻冬舎新書 2024年
近年、本当に着目を集めているアートとビジネス!自分は、もちろんアートの専門家ではないが、キャリア教育を研究しており、かつアートが好きでよく美術館に行くという立場から完全に自分の感想を述べていきたい。「キース・へリング展」にビジネスパーソンが行くべきなのは、なぜか、それは下の2つの理由からである。
アートも新商品もストーリーが大事ってことが分かる
ビジネスに生かせる発想力を学ぶには最適なアート
アートも新商品もストーリーが大事ってことが分かる
では、さっそく1つ目。今回の展覧会の最初に展示されているニューヨークの地下鉄駅構内でへリングが描き始めた「サブウェイ・ドローイング」。その1980年代初頭のへリングの活動、ちょうどそのへリングの描いているところを撮った写真が展覧会でも飾ってあった。イメージをもってほしい。
※この展覧会は一部を除き、写真撮影がほとんど許可されている。
こんな感じである。地下鉄の駅構内でアートを描き始めたのだ。その時の絵が展示してあった。それが下の絵である。
皆さんは、この絵をみて、どう思っただろうか??
恥ずかしながら自分が本当にキース・へリングって実は知らなくて、、、そして全くの素人だから許してほしいのだが、最初に直感的に思ったのが
「これ落書き?!アートなの?これ、そこらへんの人も描けそう」
(あー本当に、へリング愛好家の皆さん、本当にすみません)
でも、よく想像してほしい。確かに美術館の展覧会に飾られると、なんだか、誰でも描けそうな絵に見えてしまうかもしれない。
しかし、この絵を有名なアーティストが、誰もが簡単に見ることができる地下鉄駅構内で描き始めたら、、、そうまさにアートをストリートへ、そんな有名アーティストの思いでアーティストがこの絵を描いたと知ったら、これを落書きなんて決して言えないと思う。
「キース・へリング展」に行けば、「サブウェイ・ドローイング」の絵もいくつか飾ってあり、そんな想像を膨らませながら、そんな文脈で絵を解釈していこうとするとなんか違って見えてくる。
ちなみに、キース・へリングがあんまり分からない人のために、へリングがどんな絵をそれまでやその時の近くの年代で描いていて、有名になっていたか、いくつか下に載せておこう。
すごすぎる!!こんなアートを描いていたアーティストが、突然、駅構内でみんなが見える場所に描き始めたら・・・
絵単体だけ、何も知らずに見たときに「なんだこれ?!落書きか!?」って思った自分が本当に、恥ずかしくなった。
つまり、アートは、いかなるストーリーが背景にあるかで見る人たちがその価値を決めていくのである!!
これらを間近で見ることができる、「キース・へリング展」はビジネスパーソンこそ、感性を研ぎ澄ますために行ってほしい。そこの解釈は、きっとビジネスパーソンたちが新商品や新しいサービスを考えるときに、どんなストーリーを組み込めば、どんなストーリーを生み出せば、新商品が世の中に受け入れらるかみたいなかたちで生かしていけると思う。自分が専門としているキャリア教育という意味でも、生徒たちにとって、創造性を働かせる(育てる)ために、いかにストーリーを調べられるか、ストーリーを知っているか、そしてストーリーを生み出せるかが鍵であることを教えてくれている。
ビジネスに生かせる発想力を学ぶには最適なアート
そして2つ目である。創造性や発想力を学ぶには、現代アート、今回の「キース・へリング」展は結構面白いと思う!
とにかく、へリングの絵をみてほしい、展覧会で撮った本当に一部の絵である。色々なことを述べるが、自分はへリングの専門家ではないので、その点は美術史的に間違った解釈があったらご了承ください。
このへリングの絵をみて、何に見えるだろうか??
へリングを知っている方すれば、よく見るへリングが描いたポップアートの一つと言うかもしれない。
このタイトル、実は「フラワーズⅠ」である。ということは、きっと花なのだろう。そして、展覧会では、この絵の近くにこんなへリングの言葉もある。
どうやら、あの絵は、色々な人たち、多様な人たちを花として描いた作品なのかなぁってことが推測できる。「花」って、あんな風に描く??って、一般的な花の絵をイメージすると、そんな驚きや戸惑いがでてくる。
アートをみるときって、その常識破りや驚きがすごく大事だと思っている。アートを見ると、新しい発見がある。常識でいう「花」ではない、独自のへリングの思想の入った独特の表現の「花」を見ることによって!
多分、この常識破りな発想って、今の新商品の開発や新しいサービスを考えるときに結構大事なように思える。数値やデータの根拠からは到達しえない、感性が呼び覚ますクリエイティブな発想って、他社との差別化を図る必要がある新しい商品やサービスの開発にはとても大切なんじゃないかなぁって思う。だからこそ、「キース・へリング展」に行って、発想力や創造力のヒントをもらってほしい!!
以上、私が「キース・へリング展」をビジネスパーソンにすご~くおススメする理由である。ぜひ、名古屋の松坂屋美術館に足を運んでほしい。幸いにして松坂屋美術館は18:00までやっていて、17:30までに行けば入ることができる。会社帰りにさっと寄って、少し見るだけでもいいと思う。日常とは離れたアートの世界でぜひ、感性を研ぎ澄まして、発想力や創造力のヒントをえてほしい!!11月16日(土)までやっていて、会期中無休とあるので、何曜日でもいいから栄の松坂屋に寄ってほしい。