PPP的関心【団地の多機能型再生。暮らしの変化に合わせたコンテンツの変化】
団地に住商の複合的機能を備える、多様なコンテンツを挿入する多機能化という記事「首都圏の老朽団地、多機能型に再生 店や医療施設併設」を読みました。
もともと郊外の住宅団地にはスーパーマーケットなど日常の買い物を支える施設は設置されていた場合もあるので、住商「複合化」に注目することは今更の話ではないと思うのですが、「多機能化」については意味がある変化だと思いました。記事中の「余剰の敷地にスーパーやテレワーク施設、ジャズ喫茶などを設け」るというのは、多機能化というより暮らしの変化に合わせたコンテンツのアップデート・変化であり、この点に特に注目しました。
PPP的発想の公営住宅サービスの維持施策でもある取り組み
今回記事で取り上げられた団地では、建て替えによって生じた余剰地に商業を誘致し、住民サービスを向上させると同時に土地賃借料を得ることにより居住サービス(公営住宅の提供)を持続させるという、いわばPPP的な取り組みだと言えます。
#日経COMEMO #NIKKEI
複合機能はもともとあった。
ポイントは「暮らしの変化」への対応
よく考えてみると、集合住宅型の郊外団地にはもともと商業機能(いわゆる団地内商店街)が備わっていた開発団地も多く、住民サービス提供と団地の機能(サービス提供や美観保全など)の維持とその両立というアイデア自体は「全く新しい策」とは言い切れないと思います(注。一戸建て型の住宅団地の場合、そもそも域内に店舗を立地させにくかったこともありますが、2016年以降の建築基準法の許可運用に関する通達以降はコンビニや日常生活のための小規模な店舗設置が可能になり「複合化」による効果を生じさせやすくなっている)。
一つ新しいことがあるとすれば、それは機能として挿入されたコンテンツのバリエーションではないでしょうか。
暮らしの変化にコンテンツを更新できてこなかった
これまでの居住サービス提供
「遠郊外住宅団地における買い物支援策に関する一考察 埼玉県日高市こま武蔵台を対象とした食料品の購買行動・意識調査の解析から」(日本建築学会計画系論文集/84 巻 (2019) 760 号)に興味深い記述があります。
郊外住宅団地居住者の買い物(食料品の購買行動)における店舗への不満をアクセス性や必要な品物の入手可能性といった「買い物の質」に焦点をあてて分析し、移動支援や宅配サービス提供などによるアクセスや入手可能性への支援のあり方に触れています。
こうした指摘は「居住者の暮らしの変化に対応した居住サービス」の提供不足、対応不足という見方をすることもできそうです。
居住サービス提供におけるアップデートを続けること
そもそも郊外団地は高度経済成長を支えた大都市圏新住民が独立した世帯を営むために必要な住サービスの提供であり、新しい暮らし方の提案といった側面もある一方で、極論をすれば住み暮らす上で、供給側が「与えた」居住サービスでもあったと思います。
しかし居住者は変わります。年齢も重ねますし、家族の数も、生活への期待も変わり続けます。供給側が当初「与えた」ままの居住サービスだけで充足できなくなっていくのは自然なことです。
例えば高齢化は居住世帯の消費量を落とすし嗜好する食べ物の質も変えますし、あるいは医療も「身近な」医療への期待も高まると考えられます。そのような「居住者の暮らしの変化」に住サービスの提供がアップデートできてこなかったという側面もあったのではないでしょうか。
こうした観点からみると、今回記事内で紹介されていた「多機能化」の例は居住サービス提供のアップデート活動とも言えます。そのように考えると、大事なことは、この先もアップデートし続けることだと思います。